モンゴルの新政権は、財政赤字が国内総生産(GDP)のほぼ2割に達していることを明らかにした。通貨下落を招いた深刻な財政状態が浮き彫りになった。
総選挙で圧勝したモンゴル人民党は厳しい支出削減計画を打ち出したが、それでもモンゴルの財政は歳入が5兆3400億ツグリク(約2400億円)であるのに対し、歳出は9兆7000億ツグリク。財政赤字はGDP比18%で、同4%という法定上限を大幅に超えている。
人口300万人、GDP120億ドルのモンゴルは、鉱業に大きく依存し、主として中国に1次産品を輸出する。鉱業投資の急増が国際通貨基金(IMF)融資の繰り上げ返済につながったが、最近の銅、石炭価格の下落でモンゴル経済は大打撃を受けている。
来年3月には、政府系金融機関のモンゴル開発銀行が発行した債券5億8000万ドル分が償還を迎える。モンゴルはこの先2年、中国の中央銀行との通貨スワップを含めて17億~18億ドルを返済しなければならない。
「我々の優先事項は、財政に規律と秩序をもたらし、国民に全体像を示して政策行動の理由を理解してもらうことだ」と、ムンフオルギル外相は述べた。
■支援要請に踏み切る見通し
予算計画には、公務員給与のカット、増税、退職年齢の引き上げなどが盛り込まれている。学費補助や人気の高い世帯当たり月額2万ツグリクの「子ども手当」など、鉱業ブームのさなかに設置された福祉給付の基金も干上がった状態だ。
「財政の圧迫がひどくなることは見越していたが、これほど危機的な状況になるとは予期していなかった」と、アジア開発銀行(ADB)のヨランダ・フェルナンデス氏は言う。「モンゴル政府は厳しい2年を迎えることになる」
人民党政権は国際支援を正式に要請していないが、観測筋の間では、予算が承認されて今年の政府計画がまとまれば、支援要請に踏み切るものとみられている。
今月、IMFの代表団がモンゴルを訪問した。モンゴルが2009年に借り入れた2億3200万ドルを繰り上げ返済できたのは、輸出価格上昇のおかげだった。
首都ウランバートルの周辺に広がる居住地「ゲル地区」で昼食専門の飲食店を営むエルデネバヤル氏は、政府が明らかにした財政赤字に驚かなかった。「店の売り上げと、お客の暮らし向きを見ればわかることだ」
店に居合わせた常連客が、子ども手当の問題や金利の高さについて口を挟んだ。通貨の下落を食い止めるため、金利は今月15%に引き上げられた。10代の子ども5人を持つネルグイというシングルマザーは、市場の清掃係として働く時間を延ばし、子どもたちも働かせるつもりだという。「子ども手当で本当に助かっていた」と彼女は話した。「子ども手当だけが頼りという家庭は相当多い」
モンゴルの平均世帯所得は前年比で約1割減り、失業率が上がっている。エルデネバヤル氏は、こう付け加えた。「11月までには落ち着くと首相は言った。そうならないと、冬はうんとひどいことになる」
By Lucy Hornby
(2016年8月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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