リオ五輪にも冷静

 2016年の夏は、オリンピックイヤーの夏だった。愛国心が一気に燃え上がっていもおかしくなかったが、オリンピックに対しても妙に冷めた反応だった。

 女子ゴルフの朴仁妃(パク・インビ=1988年生)選手がぶっちぎりで優勝したときはそれなりの盛り上がりはあったが、大会期間中の関心はそれほど高くなかった。

 もちろん、成績がイマイチだったこともある。アーチェリー男女など圧倒的な強さを見せた種目もあったが、マイナー競技が多く、熱狂とはほど遠かった。

 金メダル9個にも不満だった。柔道、レスリングなどの有力選手が相次いで敗れるというニュースもあった。日本の活躍も鬱陶しかったはずだ。

 そんななか、もう1つの「新語」がネットでたびたび踊った。

 「ククポン」。これはトンでも造語だ。ククは「国」。ポンは「ヒロポン」のこと。「愛国主義ヒロポン」を打つように、過度に愛国主義を煽る行為を否定的に指す言葉だ。

 ちなみに韓国語でもヒロポンはヒロポンだ。

 オリンピック期間中、自国選手を過度に応援する中継放送を「ククポン」と呼んで、特に若者たちが敬遠する雰囲気があった。

 どの国のオリンピック中継放送もスポーツ中継とは言えない内容になる場合がある。韓国でも、一部解説者が、相手国選手の容姿を中傷する場面があった。

 男子サッカーの準々決勝で韓国が敗れたときは、アナウンサーが泣いてしまい、問題になった。

 以前ならこうした中継も、許される雰囲気だったが、なんとなく「うざったい」と感じる人たちが増えたようだ。

愛国映画に歴史論争

 夏には毎年のように「愛国映画」が封切りになる。光復節の時期に、歴史について考えようということで、映画会社のマーケティングとしても恒例化していた。

 2016年夏には、「徳恵翁主(トクヘオンジュ)」という映画が封切りになった。徳恵翁主は、李氏朝鮮最後の国王だった高宗(コ・ジョン)と側室の間に生まれた王女の名前だ。

 日本による韓国併合で高宗が日本の王公族となったため、学習院に留学。その後、旧対馬藩主の当家と結婚した。娘を授かったが健康を害して離婚。1962年になって韓国に戻り生涯を終えた。

 激動期に自分の意思とは全く関係なく数奇な人生を送ることになった王女を主人公にした歴史映画だ。

 悲劇のヒロインを主役に日本の植民地支配を批判する内容だ。観客動員は400万人を超え、興行としてはまずますの成功だ。特に女性層に人気だ。

 だが、熱い盛り上がりはさほどない。それどころか、この映画をめぐっては「歴史歪曲論争」が持ち上がった。

 映画では、徳恵翁主が日本からの独立運動を支援したり、日本に徴用された韓国人を慰労したりハングル教育をする場面が出てくるが、これらは創作だ。特定の人物を扱った歴史映画で「度を越したフィクションだ」という批判が出ている。

 2016年夏。韓国は歴史的とも言える猛暑が続いている。ただ、愛国熱は、平常を保っている。