太陽系から最も近い地球型惑星発見、過酷な環境

54日間念入りに観測、生命存在の可能性は?

2016.08.26
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赤色矮星プロキシマ・ケンタウリの弱い光に照らされる惑星プロキシマbの想像図。(PHOTO ILLUSTRATION BY ESO, M. KORNMESSER)
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 太陽系から最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリの周りで、地球ほどの大きさの惑星プロキシマbが発見された。太陽からの距離はわずか4.24光年と、宇宙では目と鼻の先。惑星の公転軌道の大きさから推測される温度は、表面に液体の水が存在できる程度の暖かさであるという。科学誌『ネイチャー』8月25日号に発表された。

 プロキシマ・ケンタウリは、南天のケンタウルス座にあるケンタウルス座アルファ星という三重連星の中で最も小さい星である。

 ケンタウルス座アルファ星は、昔からSF作家のインスピレーションをかき立ててきた。人類が星間空間に初めて飛び出すときの目的地になると予想されているだけでなく、遠い未来に太陽が死期を迎えて地球が亡びるときには人類の移住先になるとも考えられている。(参考記事:「宇宙船をアルファ・ケンタウリへ、ホーキング博士らの超高速宇宙探査計画」

2012年の勘違い

 太陽系外惑星に興味がある人なら、ケンタウルス座アルファ星に惑星が発見されたという報告が初めてではないことを覚えておられるだろう。ケンタウルス座アルファ星は、赤色矮星のプロキシマと、太陽に似たA星およびB星の3つの恒星からなる。2012年に、このB星の周りに地球程度の質量の惑星があるかもしれないという発表があった。けれどもこれは、十分な観測が行われていない段階での先走った発表であり、その後の観測により惑星の存在は否定されてしまった。データのノイズとB星の活動を惑星と勘違いしてしまったというのが真相だった。(参考記事:「太陽系から最も近い太陽系外惑星が消えた!」

 これに対して、今回のプロキシマが惑星を持つことは確実で、凄腕のマジシャンでもないかぎり、プロキシマbを消し去ることはできないようだ。惑星の存在は、54日にわたって収集されたデータに基づいて確認されている。米エール大学のグレッグ・ラフリン氏は、「非常にはっきりした信号です。ノイズの中から信号を取り出すために、怪しげな手法に頼る必要はありません」

 プロキシマbは、「ペール・レッド・ドット(Pale Red Dot)」プロジェクトによって発見された。プロジェクト名は、SF作家のカール・セーガンが、はるか彼方から見た地球を「ペール・ブルー・ドット(淡い青色の点)」と呼んだのをもじったものだ。

 科学的には、今回の発見は特に意外なものではない。過去10年間の太陽系外惑星の発見から、プロキシマのような赤色矮星は惑星を持っている可能性が非常に高く、そうした惑星のかなりの部分が、今回発見されたプロキシマbのように小さく、岩石からなり、表面に液体の水が存在できる暖かさであることが分かっている。

 プロキシマ・ケンタウリの周りの惑星を探すこれまでの試みは、公式には空振りに終わっていたが、実際には、1つ以上の惑星があることを示す兆候があり、じっくり探せば検出できるのではないかと考えられていた。

「できるだけ懐疑的に」

 惑星が主星の周りを公転すると、重力によって主星をわずかに引っ張り、ふらつかせる。大きい惑星は主星を大きくふらつかせるが、地球程度の質量しかない小さい惑星が主星を引っ張る力は非常に小さく、これを検出するためには、高感度の観測装置で長期にわたって観測しなければならない。

 2000年から2014年にかけて散発的に行われた観測から、プロキシマの周りを約11日の周期で公転する惑星の存在が示唆されていたが、その信号は不明瞭で、惑星があると断定するには至らなかった。ペール・レッド・ドットのチームは、惑星がプロキシマをふらつかせていることを確認するため、2016年初めに南米チリのラ・シヤにあるヨーロッパ南天天文台にある高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)を使って、プロキシマのふらつきを観測した。

 HARPSは毎晩プロキシマの動きを測定し、科学者たちはそのデータが1つずつ入ってくるのを辛抱強く待った。すでに知られているのと同じ11日周期の信号は、すぐに見つかった。しかし、英クイーン・メアリー大学のギエム・アングラーダ-エスクデ氏は、20日ほど観測を続けた後に、ようやく自分たちが惑星を発見した可能性があると認めた。彼はさらに10日観測を行ってから、この発見について報告する論文を書きはじめた。

 アングラーダ-エスクデ氏は、「一晩に1つのデータしか収集できなかったため、できるだけ懐疑的になろうと自分にいい聞かせていました」と打ち明ける。「惑星を発見したと発表してから数カ月後に撤回するような事態は避けたかったからです」

 観測データは、プロキシマbの質量が地球の1.3倍、公転周期は11.2日で、主星からの光は弱いが、表面に液体の水が存在できる程度の距離にあることを示している。

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