岡山市南区豊成のマンション敷地内で5月末、指定暴力団神戸山口組系池田組の幹部が射殺された事件は発生から1カ月が過ぎた。対立組織の組員が裁判員裁判の対象となる殺人罪などで起訴され、今後、岡山地裁で審理される見通しだ。ただ、福岡県では5月、暴力団絡みの事件の裁判員が被告の知人の元組員らに声を掛けられ、辞任する事態が発生。岡山の事件審理でも裁判員の安全確保が課題となりそうで、原則通り裁判員裁判が行われるか、例外的に対象から外されるのか注目を集めている。
「被害者と面識はなく他に接点もうかがえない。個人的な恨みによる犯行ではなく、組織の指示があったとみるのが普通だ」。ある捜査関係者は話す。
これまでの調べで、事件の背景には指定暴力団山口組と、同組織から昨夏分裂した神戸山口組との対立抗争があるとみられている。現時点では、起訴された山口組系組員の単独犯行とされるが、岡山県警と岡山地検は、組織的な関与や共犯者の有無を解明するため、捜査を続けている。
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一方で、組織ぐるみの犯行との疑いが強まるほど、裁判では「事件を審理する裁判員に組関係者が接触して危険を及ぼしかねない」との懸念が増す。
5月には、殺人未遂罪に問われた特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)系組幹部の知人で元組員の男らが、福岡地裁小倉支部での公判後、近くの路上で複数の裁判員に「裁判におったね、顔を覚えとるけんね」などと声を掛けたことが判明。身の危険を感じたのか、裁判員4人が辞任を申し出た。同支部は「身体上、精神上の重大な不利益が生じる」と認めて解任を決めた。判決期日も取り消され、元組員ら2人は、裁判員法が禁じる裁判員への威迫行為などに当たるとして逮捕された。
このケースを教訓に、岡山の事件の審理でも警戒が強まる。岡山弁護士会の杉山雄一副会長(刑事委員会担当)は「裁判所入り口への金属探知機設置や警備員の増強、裁判員の送迎など安全を守る態勢を万全にすべき。裁判員の選任手続きで辞退者が続出することも想定し呼び出す人数を通常より増やす必要もある」と指摘する。
検察官の請求や裁判所の職権により、裁判員裁判の対象から外す裁判員法の除外規定を適用する可能性もある。工藤会関係者が被告となった別の事件では、裁判員に危害が及ぶ恐れから、除外する決定が出されている。岡山地検の福田尚司次席検事は被告を起訴した際の会見で、事件の背景を考慮して「除外の請求も検討している」と明かした。
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とはいえ、専門家の間では、重大犯罪は裁判員裁判で裁くのが原則で、除外はあくまで例外措置との見方が強い。
「暴力団におびえて司法の運用を安易に変えるべきではない。社会が一丸となって裁判員制度を守る意識を持つべきだ」と主張するのは、甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)。岡山大の原田和往准教授(同)も「暴力団の抗争事件というだけで対象から外すべきではない」との立場で、除外する場合について「裁判員にどのような危険が生じる恐れがあるか、裁判所は明示しなければならない」と注文する。
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