「恋愛相談所」、「別れさせ屋」……
多種多様な恋愛事情が渦巻く昨今。このような時代のなか、人々の恋愛に着目したビジネスが増えていますが、「復縁」をテーマにした商売も出はじめました。
復縁屋はあまり知られていない業態ですが、実際にどのようなサービスを展開しているのでしょうか。興味を持った私は、復縁屋の実態とそのテクニックについて探るべく、現場に潜入してみることに。
ということで今回は、筆者である私が1年間潜入してわかった「復縁屋」の実態をご紹介します。
4パターンに分けられる依頼者の特徴
復縁屋の研修を行う上で最も興味深かったのは、依頼者のパターン分析についての研修です。依頼者は、以下の4パターンに分けられます。
【1】共依存型
共依存とは、お互いに依存し合って生きている関係のことです。例えば「私にはこの人しかいない」「私がいないと相手はダメ人間になってしまう」などの依存度の高い思い込みを指します。
復縁を依頼してくる人のなかでは、もっとも多いパターンです。共依存は、どちらかがフェードアウトした時点で、共依存としての関係は消滅します。ただ、それでも共依存に縛られている人は「あの人も私を探しているはず」と、いなくなった相手を探し続ける傾向にあります。
【2】自己中心型
「私をもっと幸せにして!」「結婚したい!」という一方的な想いをぶつけすぎて、相手が離れていったというパターン。これは、片方の自己欲求が強すぎることに別れた原因があります。
このような方の特徴は、依頼してくる時も相手への要求しか口にしません。反省はしているものの、復縁できたとしてもすぐに別れるのがこのパターンです。
【3】妄想型
これは、そもそも恋愛関係が成立していなかったのにもかかわらず、復縁を依頼してきているパターンです。一夜だけ身体の関係を持った相手に対して、一方的に付き合っていると勘違いし復縁を希望される方は、わりと多くいます。
性欲が愛着にかわり、愛着が執着に変わる原因は、脳内ドーパミンの分泌が関係しているとされています。「高額な料金を払ってでも復縁したい」と切望されるのも、このタイプが多いです。
【4】負のスパイラル型
過去になんらかのトラウマを抱えており、それが原因で破局。さらに「その別れさえも受け入れられない」という負のスパイラルに陥っています。負のスパイラル型は、女性側が抱えていることが多いです。
「別れた彼の前に付き合っていた人に浮気された→また同じようなことが起こるに違いない」
これが負のスパイラルです。
カウンセリング時に使われる心理術
契約まで至らないことには、復縁は商売にはなりません。そのため、復縁屋カウンセラーは心理術を使ってお客に信用してもらい、安心感を抱かせる必要があります。
カウンセリング風景を目の当たりにした結果、カウンセラーたちが複数の心理術を駆使していることがわかりました。
ピーク・エンドの法則
ピーク・エンドの法則は、なにか出来事が起きた場合、その出来事に対する印象は「ピーク」と「エンド」の情報によって左右されるという現象です。例えば口喧嘩で破局したカップルの場合、ピークは口喧嘩になってしまうものです。これだと、お二人の思い出は悪いものとなってしまいます。
ここで「出会った頃のことをお聞かせください」という質問を投げかけると、出会った頃の楽しかった記憶が呼び起こされます。トークのなかでピークを出会いに切り替えさせ、「楽しかった思い出」に塗り替えることで、復縁に対して前向きになるのです。
バーナム効果
バーナム効果とは、誰にでも当てはまるようなことを言い当てることで、相手が「自分を理解してくれている」と錯覚してしまう現象です。
例えば、以下のような言葉を投げかけたとしましょう。
“あなたは時々、孤独感に苛まれることありますね?”
誰にでも当てはまる内容ではありますが、言われた側はそれに驚き、相手を信用してしまいます。誰にでも当てはまる心理効果ではありませんが、いたるところで使われる手法です。
工作時に使われる心理術
復縁屋工作員は、文字通りターゲットと依頼者が復縁できるように様々な工作を働きます。工作員のミッションは、ターゲットに近づき復縁に導くこと。
工作員に同行できるチャンスが到来したので、工作員の心理術も徹底的に探ってきました。
ブーメラン効果
ブーメラン効果とは、人はあからさまに説得されたり強い批判を浴びたりすると反発したくなるという現象です。
工作時には、わざと元恋人(依頼者)に関するひどい悪口を言って「そんなことはない!」という言葉を吐き出させることを目的としています。
スリーパー効果
スリーパー効果は、信ぴょう性の低い相手から得られた情報は、その場では効果が薄いものの、時間の経過とともに発信者の情報が薄れていき、結果として情報の信ぴょう性が高くなるという現象です。
工作時には無関係の第三者を使い、交際時の後悔などを呼び起こす働きをします。
同調圧力
同調圧力とは、少人数の賛成派と多人数の反対派がいた場合、同調して多人数の反対意見に合わせようとする傾向がある現象です。
工作時にはターゲットと依頼者の共通の友人を使い、復縁に対して前向きな意見を言わせます。
工作員が実践する復縁までの行動
STEP1:ターゲットと接触する
復縁工作は、ターゲットとの接触からはじまります。今回は例として、小説好きの男性をターゲットと仮定します。
・出版社勤務の女性を工作員に選ぶ。
→ターゲットが面食いだった場合はとびきりの美人を選ぶ。
・ターゲットにさりげなく近づき、声をかける。
→「携帯電話をタクシーに忘れた、貸してほしい」など。
・借りた電話から自分の携帯にかけることで、通話履歴が残る。
・「後日お礼がしたい」と連絡をとり、食事に誘う。
このような流れで、ターゲットを食事に誘います。「そんなことでターゲットとの接触に成功できるの?」と思われるかもしれませんが、事前にターゲットの好みなども詳しくリサーチしているため、接触の成功率は90%と言われています。
STEP2:ブーメラン効果で思い出を補正する
ここでブーメラン効果の登場です。食事をしながら依頼者である元恋人の悪口を言い、思い出に対する印象を緩和させます。
・ターゲットに依頼者の悪口を言わせる。
・工作員がさらに強く依頼者の悪口を言う。
・「いや、それほど酷くはない」という逆の感情を起こさせる。
「そんなに酷くない」と依頼者をかばうような発言が出たら、ここでのミッションはクリアです。
STEP3:スリーパー効果で後悔の念を呼び覚ます
スリーパー効果の目的は、ターゲットの記憶を蘇らせることにあります。 これを復縁工作で実践すると、以下のようになります。
・工作員が、道ばたでひどく喧嘩しているカップルを演じる。
・喧嘩内容は、依頼者とターゲットの別れた原因と同じものにする。
・喧嘩したことを謝り仲直りするところをターゲットに見せる。
・成功すれば、喧嘩して別れたときの思い出がターゲットのなかに蘇る。
真の狙いは、「あの時、こうやって仲直りしていたら別れなかったかもしれない」と思わせることにあります。ターゲットに依頼者との思い出を蘇らせることができれば成功です。後悔している気持ちが少しでもターゲットにあれば、復縁率は高くなります。
STEP4:同調圧力で背中を一押し
この同調圧力のミッションを行うのは、ターゲットと依頼者の共通の友達です。事前に共通の友人を聞き出し、協力を求めます。
・ターゲットを食事に誘う。
→友人も数名同席して良いかを聞いておく。
・ターゲットは、工作員の友人が偶然共通の友人であったことに驚く。
→工作員に対して親近感が湧く。
・「依頼者とやり直さないのか」とさりげなく聞く。
・「依頼者に連絡をとってみないか」と提案する。
→工作員と友人数名が連絡を促す。
・同調圧力により「連絡してみようかな」という気持ちにさせる。
同調圧力作戦は、失敗する場合もあります。ターゲットが復縁に対して否定的な考えている場合などは、失敗に終わる可能性が高いでしょう。「連絡してみようかな」と背中を後押しできるかどうかは、工作員の腕とターゲットの気持ち次第です。
満足度70%の理由は「アフターフォロー」
復縁屋の復縁成功率はわずか10%と、決して高くありません。それにもかかわらず、クレームはほとんどありません。その秘密は、アフターフォローにありました。
復縁屋のアフターフォローには、復縁後のアドバイスはもちろん、
・婚活パーティーに参加してトーク力を高める方法
・外見のイメチェン
・部屋の模様替え
のアドバイスなども含まれています。
復縁屋満足度はなんと70%。「ここまで変わることができた」という自信にも繋がるため、「新たな恋をはじめよう」と意欲的になる方も多いようです。復縁に躍起になり落ち込んでいる人を元気づけること、意識を変えることも復縁のミッションに含まれています。
復縁屋、恐るべし
筆者の潜入捜査はわずか1年でしたが、思わず「復縁屋、恐るべし」と叫びたくなるような心理術の数々、大変勉強になりました。復縁屋に依頼したいと考えている方や恋愛心理学を学びたいという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。




