非常に強い台風10号が異例の進路をたどっている。日本の南を南西に進み、25日は沖縄・南大東島の南で停滞。今後はさらに勢力を強め、26日夜ごろ北東に進路を反転する見通しだ。専門家は日本列島を挟むように位置する二つの高気圧や、「モンスーン渦(うず)」と呼ばれる低気圧が進路に影響を与えていると分析する。来週、日本に上陸する可能性が強まり警戒が必要だ。
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気象庁によると、台風10号は19日夜、伊豆諸島・八丈島の東約150キロで発生し、中心気圧は994ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は18メートルだった。徐々に勢力を強め、25日午後6時現在、沖縄・南大東島の南約260キロにあり、勢力は非常に強く、中心気圧は945ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は60メートルと発達した。付近の海水温が30度を超えており、暖かく湿った上昇気流がエネルギーを供給し続けているためだ。
発生当初から25日までの進路は、おおむね南西。通常は北進するため、専門家は異例だと指摘する。気象庁によると、本来の進路にあたる日本列島の西側には高気圧がある。これが行く手を阻み、さらに風が弱いため、停滞したままになっているとみる。
琉球大理学部の山田広幸准教授(気象学)は別の見方だ。日本の東にある太平洋高気圧が7月20日ごろから弱まり、8月5日ごろから日本の南側に反時計回りの「モンスーン渦」が発生。渦に沿って南西に進んだとみる。山田准教授は「こういう進路をたどった台風は記憶にない。モンスーン渦がなければ、こういう動きはしない」と話す。
気象庁は、26日ごろまで停滞した後、同日夜ごろ進路を北東にとり、29日午前には日本の南に移動すると予想する。その後について、21、22日に北海道や千葉県に相次いで上陸した台風9号、11号と同様に、二つの高気圧の間を通ることが想定され、同庁の担当者は「近畿から東北までの広い範囲のどこかに向かう可能性が高い。ただ予測は難しく、九州に接近する恐れも捨てきれない。いずれにせよ風雨が強く、上陸すれば影響は大きい」と指摘する。
一方、イギリスの気象予報機関「ヨーロッパ中期予報センター」も北東に進み来週、日本に接近すると予測する。九州大理学研究院の川村隆一教授(気象学)は「(北上すれば)太平洋沿岸で大雨の危険性が高まり、構造物の倒壊もありうる。注意が必要だ」と呼び掛ける。【山下俊輔】
【ことば】モンスーン渦
日本の南海上に発生する直径約2500キロの低気圧。南の縁から東の縁にかけて活発な雲域を伴い、渦の中から次々と台風が発生する。発生に至るメカニズムは解明されていない。発生頻度は2、3年に1回で、時期は8、9月に限られる。