【北京=永井央紀】中国を訪問中の谷内正太郎国家安全保障局長は25日、北京で李克強首相、外交トップの楊潔篪国務委員(副首相級)とそれぞれ会談した。9月4~5日に中国・杭州で開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた安倍晋三首相と習近平国家主席の会談実現へ詰めの調整を行った。李首相は日中関係の改善に意欲を示した。
李首相は会談の冒頭、「7月に安倍首相と会談した際、改善したとはいえまだ脆弱な中日関係を一日も早く正常な軌道に戻す必要があると明確に表明した」と述べ、関係改善に前向きな考えを示した。谷内氏は「両国関係の発展のために努力していく」と応じた。
谷内氏は楊氏との会談では、沖縄県・尖閣諸島周辺で相次ぐ中国公船の領海侵入について沈静化と再発防止を求めたうえで、G20での首脳会談の実現に向けて協議した。年内に日本で開く予定の日中韓首脳会議への協力も呼びかけた。
日本政府は24日の日中外相会談で、G20での首脳会談を調整することで一致。岸田文雄外相は首脳会談の前提として「東シナ海の状況の改善」を求めた。中国側は軍同士の偶発的な衝突を防ぐための「海空連絡メカニズム」の早期運用開始を訴えている。谷内氏の訪中には防衛省幹部も同行しており、具体的な対応策を協議したようだ。
李氏との会談は約30分、楊氏との会談は昼食を含めて約3時間半だった。首脳会談が実現すれば2015年4月のジャカルタでの会談以来、1年5カ月ぶり。中国は安倍首相に近い谷内氏と楊氏の枠組みを「ハイレベル政治対話」と呼び、対日関係の最も重要なパイプと位置づけている。谷内氏は15年7月に北京を訪問した際も、李首相と会談した。