生産性って何?
このごろ日本経済はあまり景気がよくありません。「デフレ脱却」で日本をよみがえらせるというふれこみで登場した安倍政権も、最近はまたデフレになり、補正予算でバラマキ公共事業をやる昔ながらの自民党にもどっています。
成長率が下がる最大の原因は、デフレではなく人口減少です。特に働く人が毎年1%以上へっているので、他の条件が同じならGDPは1%以上へります。でも一人あたりでみると、GDPはそれほど落ちていません。GDPが減っても人口も減っているので、みなさんひとりひとりの生活は、それほど悪くなっていないのです。
それにしても、日本の労働生産性は高くありません。図のようにOECD諸国で21位、G7(主要7ヶ国)の中では20年以上ずっと最下位です。
これは日本人がなまけ者だからではなく、能力がないからでもありません。職業適性テストなどで国際比較しても、日本人はトップクラスです。それなのに生産性が低いのは、働き方の効率が悪いからです。
労働生産性=付加価値/労働時間
なので、分母の労働時間が長いと生産性は低くなります。つまり日本のサラリーマンの残業が多いことが一つの原因です。それも契約社員などはそれほど長時間労働ではないのですが、正社員の労働時間が長いのです。
逆にいうと、人口が減っても生産性を上げれば、まだ成長できる余地が大きいということです。それは個々の会社というより経済全体の問題です。この図で生産性トップのルクセンブルクはヨーロッパの小国で、人口は57万人。金融サービスなどの付加価値の高い産業に特化しているから、一人当たりの付加価値が高いのです。
日本の人口はルクセンブルクの20倍以上ですから、効率の悪い古い会社がたくさん残っています。中でも製造業の生産性は高いのですが、サービス業の生産性が悪く、アメリカの半分ぐらいです。これは昔ながらのていねいなサービスが残っているためです。
たとえばガソリンスタンドには、アメリカでは人がほとんどいませんが、日本では車の窓をふいてくれたりします。こういうサービスは昔の人口が増えていたときのなごりで、お客さんもそういう過剰サービスに慣れているので、なかなかアメリカのような割り切ったサービスに切り替えられません。
でも最近では人手不足で、正社員から契約社員やパート・アルバイトに切り替える会社が増えています。これは必ずしも悪いことではなく、そういう短期の労働者を守るように、雇用慣行や労働法などの規制も変えていく必要があります。
ところが日本の役所や政治家は、正社員を大事にします。彼らが労働組合で政治力をもっているからです。この傾向は野党のほうが強いので、本当は自民党が改革しなければいけないのですが、安倍政権の「第3の矢」の中に雇用改革はほとんど入っていません。
生産性の低いもう一つの原因は、日本の会社のしくみが古いことです。生産性には労働生産性だけではなく資本効率も含まれるのですが、日本の会社の資本収益率も主要国で最低で、開業率も廃業率も低く、新陳代謝が進んでいません。企業買収などの資本市場を活発化して、新しい会社を増やすことが大事です。
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