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監査用語で桃太郎を読んでみた

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こんにちは。

公認会計士GTRです。

先日「広告用語で「鶴の恩返し」を読んでみた」という投稿を目にしました。

一時期けっこう話題になり、これをパロった色々な「昔話」シリーズがあるみたいです。

これを監査用語でやったら面白いなと思い、監査用語で昔話を読んでみました。

 

 


 

XX年6月期、某監査法人におじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山のクライアントへのPDへ行き、おばあさんは川のクライアントの監査チームへアサインされました。

 

 

おばあさんが川のクライアント先で経理部長にヒアリングしていると、ドンブラコ、ドンブラコと大きな棚卸資産(桃)が流れてきました。

「おかしいな、桃にしては明らかに大きすぎる。実在性のアサーションが気になるな。そもそも川を流れている時点で商品価値の低下が考えられるから、評価減のリスクも高い。てか棚卸資産が川に流れ出るって内部統制はどうなってんだ。監査計画を見直して棚卸資産のリスクはSRへ変更だ。この桃は母集団を代表しない可能性が高いから、特定項目として持ち帰って詳細テストが必要になるな。」

おばあさんは当該棚卸資産を事務所へ持ち帰りました。

 

 

おばあさんとおじいさんがまず棚卸資産の実査を行っていると、なんと中から元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました。

「こりゃ明らかな粉飾だ。他にも棚卸資産の中に赤ちゃんが入ってる可能性あるな。サンプリングを拡大して虚偽表示を推定しないと。経営者不正の可能性が高いし、内部統制に開示すべき重要な不備がありそうだ。こりゃ今週は徹夜だな。」

子供のいなかったおじいさんとおばあさんは、財務諸表全体レベルでのリスクが高いと判断し、補助者を増員する、監査チームに職業的懐疑心の保持を徹底させる等全般的な対応をとりました。

とりあえず男の子は育てることにしました。

棚卸資産から生まれた男の子を、おじいさんとおばあさんは棚卸資産太郎と名付けました。

 

 

棚卸資産太郎は実務経験を積むと共に補習所の単位も順調に取り、やがて修了考査に合格し正式に公認会計士となりました。

そしてマネージャーに昇進すると棚卸資産太郎は言いました。

「鬼ヶ島株式会社(東証2部上場)で粉飾の恐れがあります。豊富な経験を有する監査チームメンバーが必要になりますので、私をインチャージにアサインして下さい。」

「他ジョブとの調整は大丈夫?」

「大丈夫です。今3月決算の上場他に持ってないんで」

こうしておじいさんを統括社員、おばあさんを執行社員、棚卸資産太郎を主任として監査チームを組み、他の監査チームメンバーを配員し、おばあさんに貯蔵品(きび団子)を作ってもらい鬼ヶ島へ向かいました。

 

 

往査中に、イヌ(シニアスタッフ3年目)に出会いました。

「棚卸資産太郎さん、今日どこジョブですか?」

「鬼社だよ」

「あー、例の炎上ジョブですよね?お腰につけたきび貯蔵品を一つ頂けるならチーム入りますよ。」

「助かるわ。独立性は大丈夫?」

「阻害要因はありません」

 

 

そして今度はサル(スタッフ4年目)からメールがきました。

「棚卸資産太郎さん お疲れ様です。 棚卸資産太郎さん今週現場でしょうか。私今週別ジョブのアサインリリースされ空いているのですが、お手伝いできることはございますか。お忙しい所申し訳ございませんが、確認のほどよろしくお願い致します。」

「お疲れ様です。今週鬼社です。アサイン足りてなかったので助かります。」

「承知致しました。それではお腰につけた貯蔵品を一つ頂けますでしょうか。」

「了解です。後ほど独立性確認メールを送付しますので、outlookで回答お願いします」

 

 

そして今度はキジ(スタッフ1年目)に電話しました。

「もしもし?今事務所?キジ君今週アサイン空いてるって聞いたんだけど。」

「ええ。暇なんでEラン見てます。」

「ちょっと炎上気味なんだけど、助っ人で来てくれない?」

「貯蔵品頂けるならいいっすけど、今週補習所あるんで夜は早めに上がっていいっすか?」

「大丈夫、バウチだけ頼もうと思ってるから。一応確認だけど独立性は大丈夫だよね?あと事務所にいるなら確認状持ってきてくれる?」

「大丈夫っす。了解っす。」

 

 

こうして、イヌ、サル、キジを監査チームに加えた棚卸資産太郎は、ついに鬼ヶ島社へ往査しました。

鬼ヶ島社では鬼が村人から盗んだ宝物の棚卸資産の評価と、村人への押し込み販売が論点となっていました。

「青鬼経理部長、この宝物大部分が村人から盗んでから1年以上滞留してますよね。本当に売れるんですか?」

「当たり前じゃないですか。別の村で高く売りつけてやりますよ。」

「先日の棚卸立会時に倉庫に大量の宝がホコリをかぶって置いてあったんですよ。最近の販売実績も良くありませんし、全額評価減すべきです。そもそも直近の販売したものも翌期になってから異常に返品されてますよね?これって押し込み販売じゃないんですか?」

「失礼な!ちゃんと売れてますよ。返品されたのは村人の事情で、うちには関係ないですよ。うちだって迷惑してるんです。」

「そうは言ってもね、青鬼経理部長。売掛金の確認状で村人は金額0で回答してきてるんですよ。理由を確認するために再発送したら『返品特約ついており即日返品したので債務の認識はございません』て、これ明らかに押し込み販売でしょう!こんなんじゃ監査意見は出せません!」

「参りました。降参です。確かに押し込み販売です。不適正意見は勘弁してください。」

「前期以前からやってらっしゃいますよね?過年度遡求基準で修正が必要になります。訂正報告書の提出も準備して下さい。」

 

 

こうして無事虚偽表示を発見して、家に帰りました。

その後審査も終了し、おじいさんとおばあさんは虚偽表示が修正された財務諸表に対し、適正意見の監査報告書を提出しました。

その後鬼社とは契約解除となり、おじいさん、おばあさん、棚卸資産太郎の三人はしあわせに暮らしました。

なお、鬼社ジョブはダブルスコアで赤となりました。

 

 

おしまい。


もし面白ければ昔話シリーズ他にも書いてみます。

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