VRの進化は目まぐるしい。高画質・高フレームレートの各種VRゴーグルに、頭や手足、体全体の変化も取得するトラッキングシステム、以前紹介した無限歩行すら可能にする装置など、いよいよVRが現実と同等の体験に近づきつつある。しかし悲しいかなVR世界の「モノ」をに触れ、掴むことはできない。いや、ゲーム的に掴むことは出来るが、掴んだ感触は返ってこないのだ。ところがDexta Roboticsが開発しているグローブ型デバイス『Dexmo』があればVR空間のものを掴む感触を得ることができる。グローブの指一本一本にモーターとアームが設置されており、モーターの力でものの硬さや反発力を再現する。デモ映像では岩の塊のような硬いものの感触や、アヒルの人形のような柔らかく弾性があるものの感触の差を説明している。また板のような一定の厚みがあるものも、指の可動限界が設定されることで、VR上のオブジェクトの視覚的な大きさと一致させることができる。これにより “ものを持つ” という極めて単純で汎用性が高い行為に実感を持たせることに成功している。
あたらめて何もない宙空の中で、手の動きをトラッキングして入力する手法の不安定さを思い知らされる。VR世界では視覚のリアリティに対して触覚の情報は皆無に等しい。確かに物理的にフィードバックを与えるアプローチはこれまでにいくつも方法があった。コントローラーに内蔵されたモーターの震動や超音波で人間の触覚に対して反応を返す、といったアプローチだが、それも擬似的な対応にすぎない。『Dexmo』のようにVRの世界に物理感覚をもたらすテクノロジーが、人間にとって最も強力な入力方法、”コントローラーとしての手” の偉大さを再認識させてくれる。
Via.Dexta Robotics