夏の甲子園は、日本球界の最前線を映す鏡でもある。
たとえば、ありがちなのは、打撃フォームの模倣だ。昨年は、西武の秋山翔吾がブレイクしたこともあり、秋山同様、バットを寝かせて構える選手が目立った。
【写真】”絶滅危惧種”になりつつあった「4番・エース」。日本ハムの大谷翔平選手。
そして今年、目についたのは、いわゆる「二刀流」である。
8月8日の北陸戦、東邦の「4番・エース」藤嶋健人は、ライトで出場し、本塁打、三塁打、二塁打2本と大暴れ。19-9と、大勝の立役者となった。
また、高校ナンバー1右腕の横浜の藤平尚真、同左腕の履正社の寺島成輝も、打順こそ6番や7番を担っているが、クリーンアップを打つ力は十分にある。いずれも初戦で安打を放った。
広島の高山健一スカウトは藤嶋、藤平の両右腕の打撃をこう評価する。
「5年前、東海大相模から阪神に行った一二三慎太(ひふみ・しんた)を思い出すね。彼は今、バッターに転向して頑張っているけど、藤嶋も藤平もバッターとしても育ててみたいという魅力を感じる選手です」
神奈川大会で2本塁打をマークした藤平は言う。
「高校野球なので、ピッチャーであっても、投げるだけでなく、打って、走ってと、一生懸命やるべきだと思う。どれでも一流を目指したい」
藤平の言葉に代表されるような意識の変化を、常総学院の佐々木力監督はこう分析した。
「日本ハムの大谷(翔平)選手を見習ってじゃないけど、野球小僧のような、投げても打ってもチームの主役というような選手が増えてきましたよね。エースを任されるような選手はバッティングもいいですしね」
競技は成熟すればするほど、ひとつの役割が専門化してくものだ。近年、高校野球でもプロ同様、投手はピッチングに専念し、打順は下位を任されるケースが増えた。その傾向は強豪私学ほど顕著だった。地方の公立校等で、部員が少なく、やむなくピッチャーに4番を打たせるという場合を除き、かつてはよくいた「4番・エース」は、”絶滅危惧種”になりつつあったといっていい。
しかし、それも大谷効果なのだろう、”生息数”が回復傾向にあると指摘するのはスカウトの高山だ。
「4番・ピッチャーが、また、増えてきた気がするね。大学、社会人になっちゃうと、ほとんどDH制なので、投手が打席に立つことがなくなる。そうすると、どんなに才能があってもピッチャーを続けるならバッティングはあきらめざるをえない。その点、高校は打席に立てるわけだから。選手のためにも、できる限り可能性を残しておいた方がいい。バッティング練習をして体のキレを出すという考え方もあるしね」
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