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【五輪陸上】ボルトの強さの秘密は“天然ドーピング”? 主食のヤムイモも一役

【五輪陸上】ボルトの強さの秘密は“天然ドーピング”? 主食のヤムイモも一役

陸上男子4×100メートルリレー決勝で観客の声援に応えるジャマイカのウサイン・ボルト=19日、五輪スタジアム(甘利慈撮影)

 リオデジャネイロ五輪陸上男子400メートルリレー決勝で19日、ウサイン・ボルトを擁するジャマイカが37秒27で金メダルを獲得した。ボルトは100メートル、200メートル、400メートルリレーの3種目で五輪3連覇を達成。今や短距離にとどまらず、障害種目などへも覇権を広げるジャマイカの強さの秘密はどこにあるのか?

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 英紙ガーディアンなどによると、英グラスゴー大のヤニス・ピツラディス博士らは、ボルトの伝説が幕を開けた2008年北京五輪以降、ジャマイカ選手の強さを探ってきた。

 ピツラディス博士の研究で、多くのジャマイカ人の遺伝子が、RR型かRX型と言われる“スプリンター遺伝子”であることが判明している。

 アフリカ移民を先祖に持つジャマイカ人には元来、短距離走に適した筋肉が備わっていることも明らかになった。

 グラスゴー大がジャマイカ理工大と共同で200人以上のジャマイカ選手の筋肉を分析したところ、スピードを瞬間的に上げる筋繊維が70%もあった。オーストラリア選手の場合は30%に留まっていた。

 血中ホルモンの含有量も極めて高い。赤血球の量はさらに多く、疲労からの回復が早いとされる。

 ボルトが「強さの秘密」と認めるあるものが、こうした長所をさらに伸ばしている。ジャマイカの人々が幼少の頃から主食としているヤムイモ(ナガイモや自然薯等の総称)だ。

 ヤムイモには「ジオスゲニン」という成分が含まれている。ジオスゲニンには、「若返りホルモン」とも呼ばれる「デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)」と同じような働きがあるという。

 禁止薬物のテストステロンなどと同じステロイドホルモンであるDHEAは、その効果からドーピング成分に指定されている。選手がDHEAをそのまま摂取すればドーピングになるが、ヤムイモを食べることでジオスゲニンを摂取する分には問題がないとされている。

 政府が選手の待遇を欧米並みに改善して流出を防ぐなど、国を挙げた強化策も強さを支えている。だが根底にあるのは天賦の才。その身体に秘められた特徴から、英大衆紙「サン」は、ジャマイカ選手の強さの秘密をこう結論付けている。「ジャマイカ人は自分の身体の中にドーピング薬を備えている」-。(五輪速報班)

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