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【政治】

安保法 本格運用へ 海外で武力行使の訓練解禁

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 政府は二十四日、昨年九月に成立した安全保障関連法に基づき、他国を武力で守る集団的自衛権行使も含めた全ての新任務に関する訓練を自衛隊に開始させると発表した。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に十一月に交代で派遣される陸上自衛隊部隊は二十五日から訓練を始める。違憲の疑いが指摘されている安保法は成立から一年足らずで自衛隊の新任務の訓練が始まり、運用が目前に迫ることになる。 (横山大輔)

 集団的自衛権の行使を想定した訓練は、米国との共同訓練の場を利用することになる。防衛省は十月以降に予定する日米統合演習「キーン・ソード」などでの実施で、米側と調整を進める考えだ。仮想敵国からの米艦に対する攻撃に自衛隊艦隊が反撃するシナリオが想定され、発進準備中の戦闘機への給油など米軍の戦闘支援も訓練メニューとなりそうだ。

 自衛隊員が戦闘に巻き込まれる可能性を高める新任務に関しても、実施に向けて訓練が始まる。二十五日から派遣準備訓練を始めるのは、南スーダンPKOの要員交代で派遣される陸上自衛隊第九師団第五普通科連隊(青森市)主体の部隊。

 政府は、新任務としてPKO関係者らが武装集団などに襲われた際に防護に向かう「駆け付け警護」や、宿営地の他国軍との共同防衛を付与することを検討。派遣準備訓練の一環として、抵抗する暴徒らを武器を使って威嚇、制圧する訓練を九月中旬に行う見通しだ。「駆け付け警護」では武器使用の基準を緩和し、任務遂行のための警告射撃などを容認した。

 稲田朋美防衛相は二十四日の記者会見で、訓練の開始に関し「憲法の許す範囲の中で自衛隊の貢献も期待されており、しっかりと訓練することが重要だ」と意義を強調した。

 安保法は日本が米国の戦争に巻き込まれたり、危険な任務に当たる自衛隊員のリスクを高めたりする懸念が残る。集団的自衛権の行使の容認には違憲性も指摘され、廃止論は根強い。

<駆け付け警護> 改正PKO協力法に基づき海外に派遣された自衛隊が、離れた場所にいる他国部隊や国連職員らが武装勢力に襲われた際に現場に向かい、武器を使って助ける任務。安保法で新たな自衛隊任務とし、危険性を考慮して武器使用基準を緩和した。宿営地の共同防衛は、他国軍とともに宿営地を守ること。攻撃してくる武装勢力が国や国に準ずる組織の場合、海外での武力行使にあたり、憲法9条に抵触する恐れが出る。

 

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