日中韓外相会談 危機管理の責任自覚を
日中韓3カ国の外相会談がきのう東京都内で開かれた。北朝鮮の核・ミサイル問題や、尖閣諸島を巡る日中の緊張が続く中で開催できたことは意義がある。この流れを年内の3カ国首脳会談開催につなげる必要がある。
北朝鮮は会談に合わせたかのように潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。北朝鮮は金正恩(キムジョンウン)体制になってから、ミサイル技術を急速に高度化させている。北朝鮮の核・ミサイル開発は、日中韓すべてにとって放置できない問題だ。
岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相は会談で、北朝鮮の核・ミサイル問題で日中韓が連携する必要性を強調した。中国の王毅外相も会談前、北朝鮮の核・ミサイル開発に反対する姿勢を記者団に表明した。
ただ中国は一方で、在韓米軍への「終末高高度防衛(THAAD=サード)ミサイル」配備に反発。北朝鮮のミサイル発射に対する国連安全保障理事会の非難声明に反対するなど、日米韓との距離が目立つようになっている。
中国の姿勢は国際社会の結束を乱しかねないものだ。中国には、THAAD配備は北朝鮮の核・ミサイル開発に対応する措置だということを理解してもらいたい。
きのうは日中、日韓、中韓の外相会談も相次いで行われた。改善基調にある日韓を除けば、いずれも難題を抱える関係だ。
日中間では、尖閣諸島周辺で中国の公船が日本の領海への侵入を繰り返す異常事態が続いている。日本の実効支配を突き崩す狙いとみられるが、度を越えた挑発行為だと言わざるをえない。岸田氏が、王氏に強く抗議したのは当然である。
中韓外相会談では、中国側がTHAAD配備撤回を改めて要求したようだ。中国は、商用査証の発給厳格化などで韓国に圧力を加えているといわれる。そうだとすれば、責任ある大国の対応とはいえない。
一方で3カ国は環境や原発の安全確保といった共通の課題を抱えている。18年冬季が韓国・平昌、20年夏季が東京、22年冬季が北京と続く五輪の成功に向けた協力も必須だろう。
多国間外交は、対立する国家同士に自然な形で対話の場を提供する。対話を続ければ関係改善につながることも期待できる。日中韓の対話が重要な理由だ。
中国の王氏は「3カ国の関係にはさまざまな問題があるが、3カ国は地域の平和と安定の維持に重要な責任を担っている」と語った。歓迎される発言だ。
北東アジアの危機管理に協力することは、それぞれの国の国益にかなう。そのことを自覚すべきだ。