いまの日中韓の間に漂う雰囲気は、それほど良好とは言えない。それでも、3カ国の外相が集う会談が東京で開かれた。

 北東アジアの安定と発展に重要な役割を果たすべき会合であり、昨年に続き定期開催できたことを前向きに受け止めたい。

 2国間に対立問題があれば、外交関係は直ちに滞りがちだ。だが、3カ国の枠組みという名目なら出席しやすい。この知恵を生かしたい。首脳会談も年内に必ず実現させるべきだ。

 歴史認識の問題が大きく取り上げられた昨年とは様相が変わり、今年は安全保障問題で緊張が高まっている。

 その一つは日中間にある東シナ海・南シナ海問題である。

 今月、尖閣諸島周辺の領海に侵入する中国の公船が一気に増え、日本政府が抗議をしても続いている。「対話を通じて情勢の悪化を防ぐ」とした一昨年の日中合意に反するものだ。

 もう一つは中国と韓国の間にある。韓国と在韓米軍が新たなミサイル防衛システムの配備を決めたことに対し、中国が文化交流行事の停止など、報復ともみられる動きをみせている。

 これらの背景には、それぞれの国内で、対外的に譲歩しにくい政治の事情があり、また、アジア太平洋地域での米中間の綱引きの現れという面もある。

 日中韓を取り巻く多くの摩擦の要因は今後も外交関係を揺らし続けるだろう。だからこそ、3カ国が首脳や閣僚の会合を定期的に開く意義は大きい。

 対立点を残しながらも協調して取り組むべき課題はいくつもある。

 最大のテーマは北朝鮮だ。きのう、再び北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルを発射し、日本の防空識別圏内に到達した。

 3外相が挑発行動の自制を北朝鮮に求めることで一致したのは当然だ。特に国連安保理常任理事国であり、北朝鮮と密接な関係をもつ中国がその影響力を使うよう強く求めたい。

 日中韓の自由貿易協定といった経済協力の枠組みづくりが滞っていることも残念だ。3カ国合わせて世界経済の2割という比重を考えれば、もっと歩み寄りの工夫を追求すべきだろう。

 今月、尖閣沖の海域で中国の漁船が沈没し、日本の巡視船が乗組員を救助した。同じ海を囲む隣国間では、手を差し伸べ合う事態が日常的に起こりうる現実を思い起こさせた。

 海難救援だけでなく、環境問題や災害対策などを含め、3カ国には切っても切れぬ近隣ならではの関係がある。地道に協力を積み上げていきたい。