作家の真継伸彦さん死去、84歳 仏教の本質に迫る
仏教の本質に迫る小説などで知られ、社会問題や政治運動にも積極的に発言した作家の真継伸彦(まつぎ・のぶひこ)さんが22日、急性肺炎のため死去した。84歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は長男陽壮(ようそう)さん。
京都市生まれ。京大独文科でリルケを研究。卒業後、大学などに勤めながら創作を続け、1963年、一向一揆を題材にした歴史小説「鮫(さめ)」で第2回文芸賞を受賞。その後も「無明」、「華厳(けごん)」など仏教の本質や自己発見を巡る硬質な作品を生んだ。現代語訳による「親鸞全集」(全5巻)も刊行。毎日新聞で82〜84年、半自伝的小説「青空」を連載した。作家の高橋和巳、小田実らとは同人文芸誌「人間として」で交流した他、評論・随筆集「内面の自由」、同「深淵への帰行」などで全共闘運動の思想的意味付けや批判、知識人の行動のあり方を誠実に問い続けた。文筆を志す人の学校「大阪文学学校」で講義、講演を行うなど大阪を拠点に活動し、姫路独協大教授も務めた。