「子供の頃から引っ越すたびに、家のそばに線路があった。必ず電車が家の近くを走る環境だった」と庵野氏は振り返る。ただ、電車よりも線路が好き。その理由は「線路は機能的。必要なものしかない」。機能美という点では、庵野氏の映画によく登場する“電柱”と同じだ。「線路は2本ないと完成しないし、その2本は絶対に交わらない。こんな哲学的なところも好きです」
新幹線の中では「九州新幹線800系も好きだが、やっぱり500系がいちばん好き」という。その500系の魅力について、庵野氏はこう語る。「形がいい。SFなんです。透明なチューブの中を走る列車のような、僕が思い描いていた未来の列車なんです」
山陽新幹線に乗るときはわざわざ500系を選んで乗るという。「嫁さん(漫画家の安野モヨコ氏)は鉄道には全然興味ないが、500系がホームに入ってきたときだけはスマホで写真を撮り始めた。ただいつものようにスマホを縦にして撮ったのが残念で、横だよと教えてあげました」
「しまかぜ」が欲しかった
庵野氏が鉄道模型のコレクションを始めたのは10年ほど前のこと。初めて買ったNゲージは予想どおりKATOの500系。Nゲージはそれまでずっと欲しかったが、一度買ったら止められなくなると思い我慢してきた。そんな最中、庵野氏が誕生日を迎えることになり、奥様に「誕生日プレゼントは何がほしい」と聞かれ、口から出た言葉が「天賞堂(東京・銀座の模型ショップ)に連れてって」。それを契機にコレクションを始めたそうだ。
自宅には新幹線や機関車のNゲージコレクションがある。「HOゲージも持っているが高価なので、買うときは清水の舞台から飛び降りるくらいの気持ち。でも買っても大きいので飾る場所がなく、しまっているんですよ。近鉄”しまかぜ”は欲しかったけど高かったのであきらめました」。模型について語り出すと止まらない。