政府 新経済対策の補正予算案を閣議決定

政府は24日夕方、臨時閣議を開き、先にまとめた新たな経済対策を実行するため、一般会計の総額で3兆2800億円余りの今年度の第2次補正予算案を決定しました。
政府が決定した今年度の第2次補正予算案は、先にまとめた事業規模で、28兆円を超える新たな経済対策を実行する費用を盛り込んでいます。

この中には、子育て支援のための保育所の整備や所得が低い人の生活を支援する給付金など「一億総活躍社会」の実現を急ぐために7119億円。
外国人旅行者が利用する大型クルーズ船に対応した港の整備などインフラ整備に1兆4056億円を計上しました。

また、中小企業の資金繰り支援や熊本地震と東日本大震災の復興などにも予算を配分し、経済対策を実行する費用は4兆1143億円に上ります。
一方で、低金利で国債の利払い費が減った分や不用になった事業の予算を減額することから一般会計の歳出規模としては、3兆2869億円となりました。

ただ、対策を実行する財源の大半は、借金に頼ることになっていて、公共事業などに使いみちを限った建設国債を、追加で2兆7500億円発行します。
政府は過去3年間は、国債の発行額を前の年度よりも減らしてきましたが、今回、4年ぶりに国債の発行額を増やすことになり、財政健全化の遅れが懸念されます。
政府は、この第2次補正予算案を秋の臨時国会に提出することにしています。

麻生氏「波及効果はある」

麻生副総理兼財務大臣は第2次補正予算案による消費の押し上げ効果について「消費者のマインドがいまひとつなのは否めない事実だが、港湾やリニア中央新幹線の整備の前倒しなど大きな投資を行うことは生産性の向上につながる。消費者の気持ちも変えるので波及効果はある」と述べ、期待を示しました。

一方で、年度の途中で国債を追加発行し、財政健全化が遅れるのではないかという記者団の質問に、麻生副総理は「基礎的財政収支を2020年度までに黒字化するという方向は変えていない」と述べ、財政再建も進める姿勢を示しました。

補正予算案の主な内容

今回の補正予算案はさきに決定した新たな経済対策に盛りこんだ政策を実行するために編成されました。
(1)一億総活躍社会
一億総活躍社会の実現に向けた支援策としては7100億円余りを計上しました。
この中では▽保育所の空きを待つ待機児童の解消に向け来年度末までに50万人分の保育の受け皿の確保を目指し、保育所の整備に427億円、
▽所得が一定以下の人たちの生活を支援するため、1人当たり1万5000円を給付する費用として3673億円を盛りこみました。
▽また40歳未満の世代の中古住宅の購入を支援するため改修工事を行う場合、1件当たり最大50万円を補助するなどの制度も設けました。

(2)インフラ整備
インフラ整備は1兆4000億円余りで、▽日本を訪れる外国人旅行者を増やすため大型のクルーズ船を受け入れる港湾の整備などに166億円、▽TPP=環太平洋パートナーシップ協定の発効を見据え農林水産物を輸出を増やすため加工施設の整備などに258億円を計上しました。

(3)中小企業支援
中小企業支援策は4300億円余りで、▽中小企業の海外進出を支援する国際協力銀行の融資の拡大や、▽日本政策金融公庫の貸し出し金利の引き下げなどに活用されます。

(4)熊本地震や安心・安全
熊本地震と東日本大震災の復興などには、一般会計と特別会計合わせて1兆9600億円余りを充て、▽熊本地震からの復旧・復興を年度ごとの予算の枠にしばられず弾力的に進めることができるようにするため「復興基金」を創設し、510億円を計上しました。▽東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う避難指示の解除に向け除染を進める経費として3307億円を計上しています。

また、国民の安全・安心を確保するための対策も盛りこみ、▽沖縄県の尖閣諸島周辺で中国当局の船が相次いで領海進入を繰り返していることを受けて海上保安庁の新たな大型の巡視船の配備などに674億円を計上しています。
このほか、リニア中央新幹線の建設前倒しなどのため国が政府系金融機関などを通して資金を供給する「財政投融資」を当初の計画から3兆6000億円余り増額することにしています。