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【コラム 撃戦記】

五輪4連覇に匹敵する吉田沙保里の銀

2016年8月23日 紙面から

 五輪4連覇を逸した吉田沙保里(53キロ級)は残念だった。55キロ級から落としての戦い。前日、後輩たちが頑張って金メダルを3つ取ったことも、大変なプレッシャーになっただろう。とめどなく流れた涙に気持ちを察することができた。

 私は五輪で女子レスリングの活躍を見るにつけ、思うことがある。将来を見据えていち早く女子部を立ち上げたのが、選手強化部長時代の福田富昭会長だった。1986年にアマ規定を緩和、プロとの交流を宣言した。全日本女子プロレス(全女)に世界フェスティバル日本代表選考会への選手参加を要請。翌年には第1回女子レスリングオープントーナメントを開いた。10階級、77人が参加した。

 そのとき、最年少で注目されたのが当時12歳の山本美憂だった。準決勝で敗れたが、父・郁栄さんの英才教育で少年の大会を総なめ。成人相手に大泣きする姿がいじらしかった。

 それから20年近くたち、五輪正式種目となったアテネ五輪で吉田(55キロ級)と伊調馨(63キロ級)が金、姉の伊調千春(48キロ級)が銀。努力を見事に開花させた。福田会長は「時代の区切り」と、後輩らに刺激を与え続けてきた吉田に感謝している。私も4連覇に匹敵する銀メダルに拍手を送りたい。全女の創業者である松永3兄弟の墓前にも報告に行くつもりだ。 (格闘技評論家)

 

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