雌のシカに角 研究者が注目
多摩動物公園(東京都日野市)で5日、18歳で死んだシカの仲間、シフゾウの雌「エリー」に、雄にしか生えない、枝分かれした約40センチの角が生えていた。国内で飼育中のシフゾウで最高齢だった。年を取ると雄化する傾向のある動物がいることは知られているが、エリーの角は2度生え変わるなど、より雄に近い状態。高齢になってホルモンバランスが崩れたとみられ、研究者が注目している。
シフゾウの雄は通常、1歳ごろに棒状の角が生え、2年目からは枝分かれし毎年、生え変わる。エリーは2010年ごろから頭部にコブ状の膨らみが出現して約6センチまで成長し、14年2月に落ちた。その後、角が生え変わって枝分かれし、14年末ごろに再び脱落。さらに3度目の角が生えた。
シフゾウを担当する同園の細田孝久・南園飼育展示係長によると、解剖でエリーの卵巣の萎縮が確認された。細田係長は「高齢化でホルモンバランスが崩れ、雄性ホルモンが優勢になったのではないか」と推定する。雄化の傾向は、雌雄の違いが外見で分かる鳥類で確認されるケースが多いという。
シフゾウに詳しい飯田市美術博物館(長野県)の小泉明裕学芸員は「雄のような生え変わりを雌が繰り返した珍しい事例。エリーの姉も高齢期に角があった時期があり、血縁関係や角の成長サイクルとホルモンの関係を調べることが必要だ」と話す。シフゾウはシカ科に分類され、長めのしっぽやウマのような頭が特徴。原産地の中国では「神の使い」とされるが、野生では絶滅し各国の動物園が計画的に繁殖している。【斉藤三奈子】