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組織が過ちを犯したとき、外部の有識者らに検証をゆだね、どこに問題があっ…
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組織が過ちを犯したとき、外部の有識者らに検証をゆだね、どこに問題があったかを明らかにし、次の過ちを防ぐ。
近年、社会にすっかり定着した対応だ。この夏も、耳目を集めたふたつの不祥事にからむ調査報告書が公表された。
ひとつは手術をうけた患者の多くが死亡した群馬大病院、もうひとつは燃費データを偽装した三菱自動車のものだ。これまでに判明した事実を丹念にたどり、組織のありようを考えさせる「教材」となっている。
たとえばこんな具合だ。
手術件数を増やすことを経営方針に掲げる群大病院には、当時ふたつの外科があった。だが両者は連携を欠き、事故が続いた第2外科は要員不足で、一人の医師に仕事が集中した。患者らに向きあう時間は限られ、術前に実施すべき倫理審査が行われないなど多くのルール違反があった。事故の症例も全体で共有されていなかった。
三菱自動車はどうだったか。
高い燃費目標の達成は特定の部署の責任で、それ以外の社員は無関心だった。人手も作業時間も不足していたが、「できない」といえる企業風土ではなかった。法規を守る意識が薄く、過去のリコール隠しをうけた再発防止策も根をおろしていなかった。一体となって車を作り、売る意識が欠如していた――。
業務も、不祥事の内容もまったく異なるのに、両者の病巣はおどろくほど重なる。
群大病院では、途中で異常に気づき、手術を中止させた方が良いと進言した者がおり、三菱自動車でも燃費の測定方法が法令に反しているとの声が出ていた。しかし、どちらもそのままにされた。こんなところも、合わせ鏡を見る思いがする。
世のなかに完璧な組織などない。多かれ少なかれ、問題をかかえながら毎日を走り続けている。その問題が何らかのきっかけで外に噴き出してから、あわてて善後策を講じるか。それとも、自他の間違いに学びながら早め早めに手当てをして、足元を固めていくか。
東大名誉教授の畑村洋太郎氏らが「失敗学」を提唱して久しい。この間、多くの企業や団体が、それぞれの「失敗」をふり返った結果を文書にまとめ、公にしてきた。
一義的にはその組織の出直しのためにつくられたものだ。できばえにもさまざまな評価があるが、くむべき教訓や示唆に富むものが少なくない。
分かれ道は常に目の前にある。ふたつの報告書を併せ読むと、改めてその感を強くする。
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