北原みのり「『援助交際』から20年」
作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は90年代に盛んに報道された女子高生の援助交際から、現在に至るまで“性の平成史”を振り返る。
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セックストーイショップをはじめて20年になる。先日、田房永子さんをゲストに招いて20周年記念イベントを行った。この20年間、女に関わる事件は何があった? そんなことを、「女の平成史」と名付けて二人でいろいろ話した。
1990年代に高校生だった田房さんは「エンコー報道」が最も衝撃的だった、という。「援助交際」が流行語になったのは、96年、ちょうど私が会社をおこした年だ。確かにあの頃、毎日のように女子高校生の“性の乱れ”がメディアで取り上げられ、ブランド物のために下着や唾液に髪の毛まで、売れるものなら何でも売る女の子たちに大人が群がり、スキャンダラスに報道し、評論家や学者が我も我もと語りたがった。
そう、あの頃、女子高校生のパンツを買う男たちの異常さではなく、売る女の子たちそのものが注目されていた。フェミニストの中にも、“エンコー少女”には処女性を重んじる家父長制の鼻を明かすような破壊力があるのではないか、などという考えもあった。少女の主体性や、エンコーの自己決定などを、肯定的に語る風潮があった。
当時の私は20代半ばで、エンコーする年ではなかったが、評論家のように「もてはやす」気分にもなれず、そもそも「新しいこと」とも思えなかった。10代、20代の女として、この国で生きるのは、サバイブしていることに他ならない気分で生きていた。「売る」ことは、自分と無関係の全く別世界の話ではなく、若い女に過剰な価値を見いだし値段をつけようとする世界でのリアルだった。
田房さんは当時のことを、エンコーしていた女性たちは決して大人たちが言うような「性的自己決定」を行使しているわけではなかった、と話した。つまり、若い女であるという資源を利用しないと「もったいない」という男たちの欲望に基づいた価値観に、最も順応し、または呑み込まれていたのがエンコーしていた女の子たちだった。エンコーする女の子ほど、家父長制の価値観を破壊するどころか、内面化し支えていたのかもしれない。
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