削減目標 加盟国、英離脱のしわ寄せ懸念
【ブリュッセル八田浩輔】英国が欧州連合(EU)から離脱を決めたことを巡り、EUの地球温暖化対策への影響が注目されている。英国は共通の温室効果ガス削減目標を掲げるEU内でも高い水準の削減目標を課せられており、一部の加盟国は、英離脱のしわ寄せによる負担増を懸念。削減目標の下方修正を危惧する声もある。
温暖化交渉を先導してきたEUは、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で少なくとも40%削減する共通目標を掲げている。目標の達成に向けて、加盟国間の負担を経済規模などによって割り当てる方針だ。欧州委員会の提案では、農業、運輸や建設部門で加盟国が30年までに削減すべき割合は、05年比で0〜40%と幅が大きく、英国は37%減を課せられた。
英国が離脱すれば、ほかの加盟国で英国分を負担する必要が生じる。だが、交渉筋によると、温室効果ガスを多く排出する石炭火力に頼るポーランドなどはこれ以上の負担増に反発し、「EU全体の削減目標を修正する可能性もある」という。
英国はEU離脱を決めた国民投票直後の今年6月末、EUの共通目標を大きく上回る90年比で57%削減という新たな目標を公表。EUは、英国抜きでの存在感を堅持するためにも、削減目標の修正は回避したいところだ。
EUの共通目標には非加盟国のノルウェーとアイスランドも参加している。英環境コンサルタント「フューチャー・プルーフ」のダミアン・モリス氏は「英国が共通目標に残る可能性はある。すべては、今後の英国とEUの交渉次第だ」と話す。英国がEUの排出量取引制度に参加し続けるかどうかも焦点だ。
一方、昨年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された地球温暖化防止の新たな国際枠組み「パリ協定」への影響は、現時点では小さいとみられている。英国を含む多くのEU加盟国は、負担割合が定まるまで批准を見送る姿勢を示していたが、COP21議長国だったフランスなどの働きかけで、加盟国が同時に締結することを優先すべきだとの機運が高まっている。