仙台市内で発生する落書きと放火事件の関係性を親子三人が推理していく、一風変わった小説「重力ピエロ(著者:伊坂幸太郎)」のストーリーや名言と、私が感じた感想を紹介します。
重力ピエロ(伊坂幸太郎)のストーリー
遺伝子に関係する企業に働いている「泉水」には「春」という弟がいました。泉水が弟の春を回想する所から物語は始まって行きます。(性犯罪の話が少しだけ出てくるので、性犯罪に関係する物は読みたくない方は注意して下さい)
重力ピエロ(伊坂幸太郎)の序
和泉は、弟が生まれてきた時は喜んでいましたが、実は和泉と春の父親は違う人物だったのです。かつて、和泉の母親は未成年にレイプをされますが、その時に妊娠をしてしまい、その後になって出産して生まれたのが弟の春だったのです。
弟の春は、自分の生まれた経緯を後に知る事になったので、犯罪や性を嫌悪する人物になっていきます。しかし、春の容姿は美男子だったので、多くの女性が近づいてくるのです。しまいには、ストーカーになって家までおしかけるストーカーの女性まで登場するようになり、泉水や父親から「夏子」と言われました。なぜ夏子と呼ばれたのか?それは春を追いかける女の子だから、春の次に来る季節である「夏」から取って、夏子と呼ばれた訳です。
重力ピエロ(伊坂幸太郎)の破
泉水と春は、複雑な関係にありましたが、兄弟仲は大変良かったのです。この兄弟が住んでいた仙台市では、落書きと放火事件が頻発しており、弟の春は落書きと放火事件は関係性があると言い始めたのです。
兄弟二人は、癌になって病院へ入院している父親の元へ訪れた際に、落書きと放火事件に関係性がある事を伝えます。父親は推理小説が好きで前のめりで春の話に耳をかたむけました。母親はすでに亡くなっており、この家族は三人だけになっていたのです。
春が注目したのは、落書きされた近くで放火事件が起きている所だったのです。春は、各地で落書きをされている英語をそれぞれつなげていけば、ある意味になると言います。親子3人は、落書きと放火事件には、どのような関係性がるのか推理していく事になるのです。
重力ピエロ(伊坂幸太郎)の急
泉水が、色々と調べていくうちに、放火事件のあった建物の名前に意味がある事に気付きます。そして、建物の名前の頭文字をつなげていくと、遺伝子に関係のある文字が浮かび上がってきました。
なぜ犯人は、遺伝子の文字に関係のあるビルに放火をしていったのか?この時の泉水には分からなかったのですが、真相に近づいた事に泉水は嬉しくなっていました。しかし、事件はついに落書きや放火だけにとどまらず、殺人事件まで発生してしまいます。泉水はその犯人をつきとめますが、その時に泉水は少年時代に見たピエロを思い出すのです。どんな時でも笑顔をたやさず、重力に負けず空を飛ぶピエロを。
泉水はあまりの結末に、神に祈るような気持ちで、重苦しい重力を消して欲しいと願いました。そして泉水は、犯人を警察に突き出さないまま、ついに父親が癌で亡くなってしまいます。そして父親の葬儀で、弟の春は父親を火葬する煙に向かって「行け、行け」と叫びます。泉水も心の中で「行け」と叫ぶのです。父親を火葬する煙は、先に亡くなった母親を目指して、重力に逆らうピエロのように空高くのぼっていき物語は終わりを告げるのです。
重力ピエロ(伊坂幸太郎)の名言
重力ピエロでは、ユーモアがありながら、深く考えさせられる数多くの名言があったので紹介します。
テレビを揶揄する名言
泉水が勤務する会社で働く事務の女性社員が言った言葉です。
テレビは脳味噌を腐らせる
出典:重力ピエロ(28ページ) 著者:伊坂幸太郎
私も、昔はよくテレビを見ていましたが、テレビを見ていると好きな事が出来なくなります。それなのに見たい番組がある訳でもなく、ついついテレビを付けてしまいます。そのような方は多くいるのではないでしょうか?
芥川龍之介の作品に登場した名言
春が、兄の泉水に芥川龍之介の作品に出てくる言葉を引用して言った言葉です。
人生は一箱のマッチに似ている
出典:重力ピエロ(206ページ) 著者:伊坂幸太郎
元は、芥川龍之介の作品に登場した名言ですが、この名言について伊坂幸太郎先生の解釈が書かれてあったので紹介しました。この小説では重大に扱うのは馬鹿げているし、重大に扱わなければ危険と春は説明するのです。
重力ピエロ(伊坂幸太郎)の感想
親子3人で推理をする「重力ピエロ」で、私が独断で感じた感想を紹介します。
言葉遊びのような推理小説
この小説で登場してくる数々の落書きの単語と放火現場のビルの名前。この単語とビルの名前の頭文字をつなげていき、どのような意味につながるのか?その辺りを推理していくのが、この重力ピエロの面白さだと感じました。
性犯罪の描写
この小説では、性犯罪の話が少しだけ出てきます。どのような性犯罪が行われたのか?その内容が生々しく解説される訳ではないのですが、やはり性犯罪者は許せないという気持ちになる小説ですね。