なぜこういうカードを早く切らず、あのようなお粗末な第一声になってしまったのか。なぜメディア側から問われるまで、自分たちの取り組みを社会に対してしっかり説明しようとしなかったのか。ひとつの理由としては、この会社に「広報」という視点が欠如していたからだと思っている。
8月17日に改善策としてリリースした「弊社プレミアムサービスご契約のお客様対応に関するお知らせ」の問い合わせ先は、取締役・社長室長の松尾裕子氏。これまでの商品サービスリリースを見ても、問い合わせ先は社長室。つまり、PCデポには「広報」というものが存在しないのだ。
「社長室が広報を兼務するのは珍しい話ではない、そんなことはちっぽけな問題だ」という声が聞こえてきそうだが、企業のリスク対応という点ではこれはかなり大きな問題だ。
社長室がどんなに広報業務を行おうが、それはあくまで片手間であって、主たる業務は経営者の補佐。つまり、最も顔色をうかがわなくてはいけない相手は経営者となる。
だが、企業広報はそれでは務まらない。メディアやネット世論など「外部」からどのように見られているのかということを分析したうえで、「経営側の論理・主張」と社会が衝突しないように「調整」しなければいけないのだ。
今回、PCデポの対応からは、そのような「広報的視点」はまったく感じられない。とりあえず株価下落に歯止めをかけたい「IR的視点」から、市場を納得させるために「改善策」を示したようにしか見えない。
もちろん、対応のまずさのすべてを「広報がない」ということで説明するつもりはない。ここまでの炎上案件を丸1日放置し、ザックリとした釈明だけでやり過ごそうとしたのは、PCデポの「企業体質」も大きいと思っている。
今回の炎上後、同様の高齢者トラブルや、2014年にアルバイト従業員を名乗る者がTwitterで顧客のクレジットカード情報を不正取得したことをにおわす投稿、さらに顧客に優良誤認をさせてしまう恐れのあるような広告まで、雨後のタケノコのように問題が出てきた。
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