8月22日、ハワイのパールハーバーを訪問し、真珠湾攻撃で亡くなった約2400名の犠牲者に祈りを捧げた安倍昭恵・首相夫人(その様子を報じた記事はこちらから)。「現代ビジネス」編集部は昭恵夫人に同行し、アリゾナ記念館で献花を済ませた直後に、インタビューを行った。
記念館で驚いたこと
「ハワイには何度も来たことがありましたが、パールハーバーを訪れたことはありませんでした。いつか訪問したいという気持ちは、常にもっていました。
この一年、戦後70年ということで、戦争について考える機会がたくさんありました。今年5月には、オバマ大統領が被爆地・広島を訪問し、17分間のスピーチで平和の尊さを訴えました。そのスピーチに感動を覚えながら、日本もアメリカも、お互いに過去を振り返り、そして、さらに前に進む時期に来たのだな、と気づきました。
そんな中、真珠湾攻撃から75年の節目の年に、パールハーバーを訪問し、亡くなった方々に祈りを捧げたいと思ったんです。
もちろん真珠湾攻撃については知っていました。しかし、それは歴史の授業で習った程度の知識でしかありません。実際に現地を訪れ、展示物を見て、現地の人々の話を聞かなければ分からないことがあります。私は、それを知りたかったのです。
私たちには、次の世代に歴史の記憶を託していく義務があります。しかし、その歴史について、実際にふれて学んだものと、教科書で習ったものとでは、伝えられるものがまったく違うと思うのです」
――実際にアリゾナ記念館を訪れてみて、どんなことを感じましたか。
「真珠湾攻撃が、どれだけ痛ましいものであったかを、改めて知りました。またアリゾナ記念館の下に眠る戦艦アリゾナからは、いまも少しずつ海中に石油が漏れていることを知り、75年経っても戦争の跡が生々しく残っていることに心が痛みました。
一方で想像していた以上に、アメリカが冷静に歴史を振り返っていることも感じました。というのも、展示された資料を見ていると、日本軍が残忍だった、というようなことが書かれているわけではありません。正直に言うと、来る前はもっと″怒り″が全面に出された施設なのかと思っていました。
ところが、展示物を見ると、日本には日本の経済的な事情、国際社会の中での苦しみがあった、というような説明書きが随所にありました。『リメンバー・パールハーバー』という言葉が、怒りや憎しみの代名詞ではないと気づくとともに、アメリカが成熟した民主主義の国であり、そして日本とアメリカがそうした歴史を踏まえたうえで成熟した関係を築いている、ということをあらためて実感しました。
もう一つ印象的だったのは、戦前の日本とアメリカの文化やスポーツなどの交流についての展示があったことです。そうした豊かな交流があっても、悲惨な戦争が起きることがあり、そして戦争が起こればそのつながりは一瞬で消えてしまう。私たちは、その過ちを繰り返してはならない――その決意を強くしました」