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 麻薬密売組織の撲滅を掲げるフィリピンのドゥテルテ政権による、過激な捜査手法が波紋を広げている。取り締まりに絡んで、警察による超法規的な殺人がエスカレート。自制を求めた国連機関に対し、ドゥテルテ大統領は「国連脱退」に言及して反発。外相が発言を否定するなど、火消しに追われている。

 「おそらく国連脱退を検討する必要がある。(国連が)無礼な愚か者なら、我々は去るのみだ」。ドゥテルテ氏は21日未明、記者会見を開き、こう暴言をぶちまけた。

 きっかけは、麻薬犯罪の容疑者が正当な裁判を経ずに射殺されるケースが増えていることだ。ドゥテルテ氏は大統領に当選した5月以降、「抵抗する麻薬犯罪者は殺しても構わない」と繰り返し発言してきた。捜査当局や自警団が麻薬犯罪の容疑者を殺害する事例が急増し、同氏の当選後に少なくとも900人近くの容疑者が殺害された。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は18日、「国家は国民の生命や安全を保障する義務がある」と懸念を表明。「超法規的な処刑だ」と批判した。

 国連側の批判に対し、ドゥテルテ氏は21日の会見で「内政干渉だ」と不満を爆発させた。中国や中東、アフリカ諸国とともに、国連に代わる新たな国際機関を設立する可能性にも言及した。

 「国連脱退」発言は、国内外に波紋を広げた。ヤサイ外相は22日の記者会見で脱退を否定。ドゥテルテ氏の発言は「(大統領の)深い失望といらだちを表現したものだ」と弁明した。

 強権的な手法で、ダバオ市長時代に治安を大きく改善させたドゥテルテ氏。相次ぐ暴言に危うさはつきまとうが、型破りな実行力に対する国民の期待も高い。(マニラ=都留悦史)