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iPhone新機種を直撃、携帯電話業界に「最後通告」を出した公取委の真意
公正取引委員会(公取委)が8月2日に公表した「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書が通信業界に波紋を呼んでいる(写真1)。通信事業の監督官庁である総務省ではなく、自由競争経済の基本法である独占禁止法(独禁法)を運用する公取委が、いよいよ携帯電話市場の問題にメスを入れようとしているからだ。通信業界の競争環境は次のステージに入っていく可能性がある。
通信専門ニューズレターである「テレコムインサイド」では、報告書を作成した公取委室長のインタビューを始め、この問題を多数報じてきた。ここでは、これらの取材を通してつかんだ公取委の真意、今後のシナリオについて解説してみたい。
なぜこのタイミング?:iPhone発売時期を狙った?
まず気になるのは、公取委による報告書の公表のタイミングが、なぜ8月上旬になったのかである。例年、9月には米アップルの「iPhone」新機種が発売され、携帯電話市場が盛り上がる時期。業界内では「iPhone発売を前に業界をけん制したのではないか」という見方が出ている。
報告書を作成した公正取引委員会事務総局経済取引局の木尾修文経済調査室長は、「必ずしも9月のiPhone発売を意識しているわけではない。昨年末から携帯電話事業者やMVNO(仮想移動体通信事業者)、販売代理店、端末メーカー、アプリ関係者など数十社にヒアリングし、独禁法上の法解釈を示すのに時間がかかった」と打ち明ける。
公取委として携帯電話市場の課題解消に乗り出す理由については、「これからIoT時代、第4次産業革命を迎えるタイミングで、産業基盤として、安く、多様な通信サービスを利用できるようにしていくことが重要。しかし日本市場は、通信市場については総務省が指摘するように協調的寡占状態であり、端末市場についても特定ブランドの製品が過半を超えるなど、諸外国と比べて遅れている。競争市場を守る観点から、公取委としての役割をきちんと発揮することが必要であり、今がそのタイミング」(木尾室長)と答える。
通信分野の競争政策は、所管官庁である総務省が中心となって進められている。ただ規制緩和が進み、通信市場の環境変化から、総務省が所管する電気通信事業法だけでは対応できない競争上の問題も増えてきた。今や通信市場は、電気通信事業だけでなく端末市場、アプリ市場とも密接にリンクして競争が形成されているからだ。電気通信事業法をベースに置いた総務省の競争政策も、ここに来て事業者間の競争促進よりも消費者保護に重点を置いている。
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