PCデポ「高額請求」問題で炎上中。純利益10倍ビジネスの思わぬ落とし穴とは!?

事業転換が招いた新たな問題


 同社の懸念材料はこれだけではない。実はもう1つ、すでに顕在化している懸念材料がある。これまで述べてきたように、(手法はどうであれ)純利益をどんどん増やしてきたPCデポだが、本業によって稼いだお金と、出て行ったお金の差分の増減を示す「営業キャッシュフロー」が、最新の決算でもプラスに転じていないのだ。なかにはマイナスという年もあり、事実、ほとんど稼げていないのだ。

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 原因は売上債権。すなわち、まだ顧客から回収できていないお金の増加にある。売上債権は主に売掛金と受取手形からなるが、売掛金は過去4年で約4倍、140億円弱にまで増えている。PCデポが「家電量販店」だった頃は店舗で商品と代金の交換が行われるのでほとんど売掛金は発生しなかったが、月々のサービス料や解約料で儲けるシフトチェンジをしたおかげで、すぐにお金が入ってこなくなったのだ。

 それにしても、年間売上の4分の1以上が売掛金というのはかなりの負担になってくるはずだ。同社にとって最も懸念され、かつ充分に起こりうる事態が今回の高額請求が明るみに出たことによって、各地で解約金の支払い拒否が相次ぎ、消費者庁の指導などで債権回収が進まなくなることだ。

 そうなってしまった場合、多額の貸倒損失を計上する必要が生じ、現在30億円程度の純利益は一気に吹き飛んでしまう。

 PCデポの今回の一件は、必要以上にお金を取られた顧客はもとより同社の成長を信じて株を買っている株主にも影響が及ぶ。幸か不幸か、市場からの大量の資金調達のおかげで、今回の事件とその余波を受けても、PCデポの手元にはなんとか再建に必要な資金が残っているはずだ。その残された資金を元に今度こそ、正しい業態転換を進めてもらいたいと筆者は切に願っている。

<文/大熊将八 photo by Aimaimyi via Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0>
おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok


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