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止まらぬ暴言…治安改善で実績、人気衰え知らず

ドゥテルテ比大統領=ロイター

 【ニューデリー金子淳】過激な発言で知られるフィリピンのドゥテルテ大統領(71)の暴言が止まらない。21日には、自身が進める強権的な麻薬犯罪対策を国連に批判されたとして、国連脱退の可能性を表明した。ヤサイ外相は22日、脱退は否定したものの、国連の批判に「大統領は失望し、いらだっている」と非難した。政権の強硬姿勢は国際社会から強い批判を浴びているが、治安改善の実績を背景にした、国民からの高い支持が衰える気配はない。

 「国連からの脱退も検討しなくてはならない。(国連が)無礼なくそ野郎なら、我々は去るだけだ」。地元紙によると、ドゥテルテ氏は21日、ダバオ市内で記者会見し、こう言い放った。さらに国連を「愚かな機関」だと断じ、中国やアフリカ諸国を招き、国連に代わる新たな国際機関を作る考えも示唆した。

 きっかけは、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が18日、ドゥテルテ政権下で麻薬犯罪の容疑者の射殺が相次いでいることについて「超法規的な処刑」と批判したことだった。

 OHCHRによると、ドゥテルテ氏が当選した5月以降、警察や自警団が麻薬犯罪の容疑者を殺害する事例が急増。これまでに1500人以上の犯罪容疑者が殺害された。OHCHRは「国家は国民の生命や安全を保障する法的義務がある」と指摘し、容疑者殺害をやめるよう求めていた。

 「国連脱退」発言は大きく報じられ、国内外で懸念を呼んだ。ある外交官は匿名で地元メディアに「大統領はやくざではなく政治家として振る舞うべきだ」と苦言を呈した。ヤサイ外相は22日記者会見し、国連脱退を否定。だが、麻薬犯罪の取り締まりは「重要な国内問題」だとして継続する考えを示した。

 ドゥテルテ政権が強硬姿勢を貫くのは、国民の根強い支持があるからだ。世論調査機関SWSによると、6月下旬の調査では84%がドゥテルテ氏を「強く信頼している」と回答し、選挙前の5月上旬時点の54%から大きく増加。「ほとんどの公約を実行できる」と考える人も63%に上った。別の機関による7月上旬の調査でも91%が「信頼できる」と回答している。

 ドゥテルテ氏は20年以上ダバオ市長を務め、治安改善を実現した実績がある。米紙ニューヨーク・タイムズによると、大統領選でも「最初の6カ月間で犯罪者10万人を殺害する」と主張していたという。ドゥテルテ氏当選後の6月は、犯罪件数が前月比13%減の4万6600件に減少したとの統計もある。

 相次ぐ暴言に加え、外交手腕の危うさを指摘する声もあるが、治安改善という目に見える「実績」が続く限り、支持率が低下する兆しはなさそうだ。

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