リオ 立ち退きの住民「五輪から排除された」

リオ 立ち退きの住民「五輪から排除された」
リオデジャネイロでは、オリンピックをきっかけに港湾地区の再開発や地下鉄など交通インフラの整備が行われ、街が発展したと評価する人がいる一方、住み慣れた場所からの立ち退きを迫られ、「オリンピックから排除された」という思いを拭えない人たちもいます。
リオデジャネイロ西部のバッハ地区にある、大会のメイン会場のオリンピックパークは、以前、すぐ隣に600世帯余りが身を寄せ合うようにして暮らすアウトドロモ地区がありました。リオデジャネイロに1000か所以上ある「ファベーラ」と呼ばれる貧困地域の1つでした。

この地区の住民は、オリンピックパークの建設に伴い、市当局から立ち退きを迫られました。市当局から別の住宅や補償金を提示されましたが、住み慣れた土地で暮らし続けたいと望んだ人たちは立ち退きを拒否しました。

マリア・ダペーニャさん(51)もその1人で、20年以上にわたり土地の使用と居住の許可を市から得て、ここで暮らしてきました。親戚など4つの家族とともに、ひとつ屋根の下で生活し、隣近所とも助け合って生きてきて、この場所を離れたくないというダペーニャさんに対し、市当局は住宅の取り壊しで応じ、跡地はオリンピックパークの駐車場に変わりました。

ダペーニャさんがけがをしてまで抵抗を続けた結果、市側は残っていた20世帯のために小さな家を作りました。ダペーニャさんは現在、母親と夫、娘の4人で暮らしていますが、親戚や近所の人たちとは離ればなれになってしまいました。

ダペーニャさんはオリンピック会場に足を運ばず、テレビで観戦する気分にもなれないといいます。ダペーニャさんは「オリンピックは美しい大きなイベントだと思います。しかし、スポーツはみんなのもののはずなのに、実際はそうではありません。貧しい人たちのためではなく、お金持ちの人のためのイベントです。私たちは排除されました。私たちにとって今回のオリンピックの意義は小さく、悲しみをもたらしただけでした」と話しました。

そのうえで「もし政府が大きなイベントを開きたいのであれば、市民と対話し、市民の意見を尊重しなければならないと思います。次の日本でのオリンピックでは、日本政府がそのようにすることを望んでいます」と話していました。