全くつらくない軽い運動で認知症が予防できる!? “脳フィットネス”を高めよう
運動には、認知症を予防する効果があるといわれています。なかでも、「楽しくできる軽い運動」は、脳を活性化し、気分を快適にすると、注目されています。週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』から特別に、認知症予防にいい運動を紹介します。
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からだの動きをコントロールしているのは、私たちの脳です。
「運動は脳が働いて起こすものです。脳からの指令で、筋肉が動くとそれに連動して関節、骨などの運動器は動きます。しかし、脳はただ一方的に運動器に命令を下しているのではありません。運動時に筋肉や腱、関節などから生じたおのおのの命令(信号)が脳に伝わっていき、脳を活性化します。これは脳─筋が相互に刺激し合う関係性を表しています。この興奮は同時に起きています」
こう説明するのは、筑波大学体育系教授(医学博士)で、運動生化学・神経科学が専門の征矢英昭氏です。
「真っすぐ立って歩くことは、人間の基本動作で、この動作をはじめとする身体運動は、脳と筋肉などの運動器が、相互に情報交換し合ってなしうるものといえます。だから、脳は、運動の司令塔の役割を担いながら、筋肉や骨と同じように、運動によって鍛えられる器官でもあるわけです。最近、この関係性が他臓器にまで及ぶことから、運動効果は全身に及ぶとされています」(征矢氏)
運動が脳にもたらす効果のひとつとして、征矢氏らの研究では、認知機能を向上させる可能性が示されています。しかも、ここで注目したいのは、「認知機能の向上を目的にする場合、息がほとんど弾まない、運動していても楽だと感じる程度の軽い運動でも効果が上がる可能性」が示唆されている点です。
2012年に発表された研究結果では、ネズミに2週間にわたってスローランニングをさせると記憶にかかわる脳の海馬で神経が増殖し、同じ方法で6週間続けると海馬そのものが肥大し、記憶能も増強できることが明らかになりました。
「この動物実験の結果を基に、軽い運動が、人間の海馬にどのような変化を起こしうるのか。現在、橋渡し研究としてヒトを対象にした研究を進めているところです」(同)
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