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【スポーツ】

[高校野球]作新学院、54年ぶりV 152キロ右腕・今井は涙

2016年8月22日 紙面から

作新学院−北海 54年ぶり2度目の優勝を果たし、歓喜の今井(右から2人目)ら作新学院ナイン(市川和宏撮影)

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◇作新学院7−1北海

 作新学院(栃木)が決勝で北海(南北海道)に7−1で勝ち、史上初めて春夏連覇を達成した1962年以来54年ぶり2度目の優勝を決めた。作新学院は2回に先制されたが、4回に打者一巡の猛攻で5点を奪い逆転。152キロ右腕のエース、今井達也投手(3年)が7安打9奪三振で完投した。全国最多の37度目出場だった北海は創部115年で初優勝を狙ったが、届かなかった。

 5試合で616球を投げ切った優勝投手は、心優しい男だった。決勝戦の後、作新学院側の一塁側アルプススタンドにあいさつに向かったとき、「ベンチ外になった同じ3年生が泣いていた。それが目に飛び込んできた。たまらなかった」。大会の間、冷静に穏やかに投げ続けた今井は、初めて涙が止まらなかった。昨夏は、甲子園に着いてからメンバーを外され、2試合をスタンドで応援しただけだった。その姿を思い起こしていたのかもしれない。

 54年ぶりの優勝をつかんだ決勝戦。最初から完投するつもりでマウンドに立った。2回に今大会初めて先制されたが、好調の打撃陣が4回に打者11人の猛攻で一挙5点を奪い、ひっくりかえしてくれた。

 試合前に小針監督から「(投げるのは)6回ぐらいまで」と言われていたが、「自分でいきます」と直訴した。猛暑の中、当然疲労もあるが、「(準決勝が)継投になったのが悔しかった。背番号1を背負っているんだから」と意地を見せた。3回、4番佐藤大を見逃し三振に仕留めた球は、自己最速タイの152キロを出した。最後までマウンドを守り、132球で今大会4度目の完投勝利。歓喜の瞬間、堂々輪の中心にいた。

 春は、甲子園で3試合連続本塁打の入江一塁手がエースだった。しかし、入学時は130キロの直球しか投げられなかった男が、この夏に急成長。6月の練習試合で対戦したことがあった木更津総合のバッテリーは「まるで別人」と評した。しなやかなフォームから繰り出す快速球は、初戦の尽誠学園戦で151キロを記録。3回戦の花咲徳栄戦、準々決勝の木更津総合戦では152キロと更新。準決勝の明徳義塾戦は5回で降板したこともあって最速は148キロだったが、対戦する打者によって変化球中心と速球中心と使い分ける投球術に相手打線は翻弄(ほんろう)され、3点以上取られた試合はなかった。

 野球のイロハを教えてくれたという祖父・敏夫さんの遺骨をネックレスに入れていたことが話題になった。「栃木に帰ったら、甲子園の土を何かにしっかり入れてお墓に持っていきたい」。最後の夏を終えた今井は、心優しい青年の顔に戻っていた。 (山内明徳)

 

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