毎週200万匹の蚊を放出する中国の「蚊の工場」:画像ギャラリー
熱帯病対策のため、細菌を注入して不妊化した蚊を毎週、約200万匹放す実験が中国で行われている。大量の蚊を培養する「蚊の工場」を画像で紹介。
PHOTOGRAPHS BY KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES
TEXT BY LAURA MALLONEE
TRANSLATION BY MINORI YAGURA/GALILEO
WIRED (US)
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1/15シー・ジーヨン教授は、中山大学と米ミシガン州立大学の熱帯病昆虫媒介抑制共同研究センターで指揮を執っている。同教授が立っている大量生産工場では、大量の蚊を繁殖させて育てている。
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2/15比較的孤立していることから選ばれた中国広東省広州市沙仔島で、研究員が雄の成虫の蚊を放している。不妊化させた雄の蚊を、野生の雌の蚊と交尾して感染させるのだ。
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3/15沙仔島の村人が、我が家に向かって歩いている。この島で、中山大学と米ミシガン州立大学の熱帯病昆虫媒介抑制共同研究センターは野外実験を行っている。
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4/15蚊が時々、ラボで脱走することがあるので、技術者は電撃蚊取りラケットを手元に置いている。
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5/15ラボの技術者が、沙仔島でまもなく放される成体の蚊が入ったコンテナの準備をしている。
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6/15博士課程の学生で研究員のチャン・ドンジンが、小さな懐中電灯で照らしながら、トレーに入れられた蚊の幼虫(ボウフラ)を点検している。
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7/15研究員が、蚊の蛹(オニボウフラ)が入った容器を研究用のケージに入れている。
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8/15研究員が持っている容器に入った蛹は、もうすぐ、もっと大きな桶型容器に移される。
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9/15研究員が、スポイトを使って、研究のために蚊の幼虫を顕微鏡下に置いている。
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10/152012年のプロジェクト始動時に、科学者たちは、一部の昆虫に生殖上の問題をもたらすことで知られているボルバキアを、ヒトスジシマカの野生卵に注入した。続いて、生き残ったものから、子孫にボルバキアを伝えられる雌を選び出し、その雌を使って、感染している個体群を繁殖させた。「放す蚊はすべて、1匹の蚊の子孫だ」とジーヨン・シー所長は語る。
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11/15研究員が、蛹をすくって、もっと大きな桶型容器に入れている。成虫になるまで、この容器の中で育つ。
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12/15研究員が、蚊の幼虫がいっぱい入ったトレーを懐中電灯で照らしている。
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13/15技術者が、熱いプレートの上で、蚊に与える動物の血を温めている。
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14/15大量生産工場で、ラボの技術者が、水を使って、雄の幼虫と雌の幼虫を分けている。雌の幼虫は、雄よりも大きいので特定しやすい。雌は捨てられ、雄は成虫になるまで育てられる。
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15/15研究員が、蛹が入った容器を研究用のケージの中に入れている。
中国広東省広州市にある熱帯病昆虫媒介抑制共同研究センターでは、ジカ熱などの病気と闘う科学者たちが、蚊の卵に「ボルバキア」という細菌を注入している。その後、成体になった雄を野生に放って、雌に感染させる。感染した雌は、孵化しない卵を産む。同センターは毎週、約200万匹の蚊を放している。
カナダ人の写真家ケヴィン・フレイヤーは2015年、この話を耳にしてすぐに飛行機を予約した。「中国は、世界最大の多くのものがあることで知られているが、世界最大の蚊工場はぜひこの目で見なければ、と思った」と同氏は語る。
ヒトスジシマカは、世界で最も普通に見られる蚊だ。蚊が媒介する中国の病気のほとんどは、この蚊が原因だ。また、ヒトスジシマカはジカ熱やデング熱、黄熱病を世界に広めている。
中山大学と米ミシガン州立大学が運営する同研究センターの科学者たちはこの4年間、ボルバキアに感染した蚊を近くの島で大量に放してきた。ジーヨン・シー所長によると、実験場所の蚊の個体群に関する最近の調査では、個体群密度を99パーセント減らせたことがわかったという。
フレイヤーは、6月にラボで4日間過ごし、至るところで蚊を見た。幼虫はトレーの中で泳ぎ、孵化幼生がケージの中を這い回り、容器の中の成虫は放たれるのを待っている。気味が悪いと思う者もいるかもしれないが、カナダのマニトバ州ウィニペグ出身のフレイヤーはひるまなかった。「わたしが育ったところでは、蚊は州鳥だとよく冗談を言っていた」
感染した卵が孵ると、研究員は、雄の幼虫よりサイズが大きい雌の幼虫だけ選んでこれらを廃棄する。2週間後、残った雄の幼虫をケージに移し、動物の血液で太らせる。十分に成長したら、ふたをしたバケツに入れ、沙仔島やDadao Islandsなどの島まで運んで放す。
ケンタッキー州とオーストラリアの研究チームも、同様の研究を行っている(オーストラリア主導の研究チームは2005年からプロジェクトを開始。インドネシア、ブラジル・リオデジャネイロのスラム街などで大規模な蚊の放出実験を行っている)。
米国のヴァンダービルト大学の専門家である医師ウィリアム・シャフナーによると、この方法は、ブラジルなどで行われている遺伝子組み換え蚊の放出(日本語版記事)ほど物議を醸さない、環境に優しい解決策だという。
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