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  • Brandon K. Hill

    Brandon K. Hill

    CEO of btrax, Inc

    CEO of btrax, Inc - Design Mentor to Startup Weekend - Contributor to TechCrunch Japan - Guest Speaker at UC Berkeley Asia Business Conference - Guest Speaker at Social Media Week Tokyo - Guest Speaker at 500Startups Japan Day

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スカリー事件から見る調達資金の正しい活用方法

スカリーと言ってもスティーブ・ジョブズを追いやったAppleの元CEOではない。2014年にクラウドファンディングのIndiegogo上でのキャンペーンで、約$2.5m (3億円近く) を集め世の中から大きな話題と期待を集めた次世代型バイクのヘルメットのSKULLY (スカリー)である。ここ数年でサンフランシスコのスタートアップ界隈では知らない人が居ないぐらい注目されてきたプロダクト。

このヘルメット、バックカメラやヘッドアップディスプレーに加えGPSやBlue Toothなどの各種センサーを内蔵し、スマホアプリとの連動も行なうというスマートヘルメットで、バイク乗りには夢のようなプロダクトである。また、ボイスコマンド入力にも対応し、ライディング中でも安全に情報の取得が出来る優れもの、と謳っていた…。

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参考: Skully AR-1は、GPS、HUD塔載のスマートヘルメット

クラウドファンディング上での本体購入価格は一つ$1,500だったが、その話題性とデザインのかっこよさで大きな注目を集め、最終的に合計で1940ユーザーから当初の目標金額の25万ドルの10倍近い額の資金調達に成功。その後シードラウンドで$1.5m, シリーズAで$11mを集め、合計で$15mを調達。

商品の発送自体はかなり送れたいたが、2016年中頃に”製造が順調に進んでいます。やっと皆様に届けられますよ“的な動画をYouTubeにアップし、サンフランシスコに本社を置くSKULLY社の経営は順風満帆の様に見えた。

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プロダクションが順調である事を伝えるYouTube動画

会社が突如倒産

そのSKULLYが8月15日をもって倒産した。約50人の従業員は給料が支払われないまま解雇となった。倒産発表の数日前より幾つかのテクノロジー系のメディア上では、”事態を知る関係者”から会社が危ない、CEOが辞職した、などのタレコミがあったとの記事が発表されていた。

その後正式に破産宣告がされた際のいきさつとして、製品開発における技術的な問題が発生、投資家との意見が合わず、CEOがクビになり、追加資金調達や買収のディールが上手くいかなかった、などが主な理由として発表された。

確かに外から見ると順調に見える企業でも、内部の様々な事情で急にサービスが停止したり、会社が消滅する事は少なくは無い。特にスタートアップであれば、それは日常茶飯事である。その理由として多いのは資金調達に失敗、プロダクトにユーザーが集まらない、経営陣同士のケンカ等である。

参考: 2015年に終了した30のスタートアップとその失敗理由

一体その理由は?

では、今回のケースは何が理由なのであろうか。まずは資金。確かにハードウェアを製造するには非常に大きなお金が掛かる。しかし、クラウドファンディングでは目標額の10倍のお金を集め、その後VCからの資金調達にも成功している。そもそもその後2016年7月にリリースされたステータスアップデート動画でCEO自らが”安心して下さい。そろそろ発送出来ますよ“と語っている。

次にプロダクトにユーザーがなかなか集まらない。これはWebサービスやモバイルアプリなどで最も多い理由であるが、今回のケースには当てはまらない。なんせクラウドファンディングで2,000人近いユーザーからのオーダーを獲得し、その後サイトのECページでも”Sold Out”になるぐらいの人気。では、他のファウンダーとのいざこざがあったのか? 考えにくい、なぜならSKULLYのファウンダーの2人は兄弟である。

元経理担当者が驚きの事実を暴露

そんな”なぜSKULLYは倒産したのか?“がサンフランシスコ界隈をにぎわせていた頃、驚きの事実が同社のCEOのアシスタントもあった元経理担当者のIsabelle Faithhauerから伝えられた。彼女によると、SKULLYのCEOであるMarcus Wellerは調達した資金を”個人的な目的で”利用し、その隠蔽をさせられたと事。

でも、会社の社長が経費を多少自分の為に活用する事は珍しい事ではない。では、彼女の報告を元に今回のケースはどのような内容であったかを見てみよう。

SKULLYのCEOによる調達した資金の利用方法

  • CEOの弟が住む高級アパートの家賃
  • 聞いた事の無い共同創業者への報酬 $80,000 (中国出張として処理)
  • 週末に乗る用にランボルギーニをレンタル
  • Audi R8を購入 (約$100,000)
  • Dodge バイパーを購入
  • 一台目のバイパーをクラッシュしたので2台目のバイパーを購入
  • バイク4台を購入
  • フロリダ旅行でのリムジン費用$2,000
  • ストリップでの豪遊費用$2,000
  • 絵画の購入費用$2,345
  • バミューダ諸島へのバケーション旅費
  • バミューダがつまらなかったので急遽ファーストクラスでハワイに行く為の旅費

なかなかワイルドである。

この元従業員は上記のこの不正と未払いの給料に関しての書類を既に裁判所に提出し会社を告発した。この状況に対してSKULLY社およびCEOからの発表はまだ無い。

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サンフランシスコ市内で開催されたSKULLYミートアップの様子

Too Good to be True?

今回の倒産により、プロダクトの発送はおろか、購入者には返金もされない見込みである。プロダクトの単価が$1,500である事を考えると発送を心待ちにしていたユーザーにとってはかなりの痛手。しかし、そもそもなぜこんなにも注目を集めたのか。

恐らくその秘密はSKULLYの優れたブランディングにあると考えられる。現代はプロダクトを手に取る事が出来なくても、オンラインを通じてしっかりとその品質とかっこよさを伝える事が出来れば、オーダーを獲得出来る時代である。

その中でもSKULLYは自分たちのプロダクトを”人類の未来”と表現し、クールなサイトと、めちゃくちゃかっこ良いプロモ動画でユーザーの心を掴んだ。また、別の動画ではシリコンバレーで活躍する宇宙工学のエンジニアなど、テクノロジー業界の著名人が登場し、プロダクトを”革命的”、”未来がここにある”などの言葉でべた褒めすることで安心感も提供。

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無駄にクオリティの高いSKULLYのサイト

英語に”Too Good to be True (話がうますぎる)“という表現があるが、今から考えてみるとSKULLYのヘルメットもToo Good to be Trueだったのかもしれない。夢のような製品は多くのユーザーにとっては文字通り”夢”で終わった

イノベーター or ペテン師?

人のお金を受け取った時、CEOは自分への報酬をどう設定しているのであろうか?以前に調達した資金の使い道の一つとして、CEOは自分にいくら給料を払っているのかという記事を書いた。結構報酬が高くて驚いた人も居るかもしれない。しかし、今回のケースは次元が違う。あくまでプロダクトの製造費用としての資金調達が主であるはず。

参考: 海外スタートアップのファウンダー達は自分にいくら給料を払っているのか

実はSKULLYのCEOであるMarcus Wellerは、今年開催されたSXSWでのセッションにて、btraxのNo.2であるTim Wagnerと共に次世代のUIについてのパネルディスカッションをおこなったりなど、以前よりうちの会社のスタッフとはそれなりの交流があった人間。サンフランシスコで開催されるテクノロジー系のイベントでは度々ゲストスピーカーとしても登壇したり、自社イベントの開催も行なっていた。

そんな彼が上記で紹介したように獲得した資金を私的流用して豪遊していたとはイメージがわきにくい。が、シリコンバレーでは起業家とペテン師は紙一重なんて言ったりもする。今を輝くイーロン・マスクもTesla社が倒産直前状態の時にはシリコンバレーでは”奴は希代の詐欺師”と呼んでいた人も少なくは無い。

SKULLYはその洗練されたコンセプトを動画でチョイ見せ。そして、公式サイトでプロダクトをかっこ良く見せ、クラウドファンディング経由で製造前から多額の資金を調達し豪遊する。今回はあっぱれとしか言いようが無い。お金を出した人にとってはシャレにならないだろうが…。

いまごろヘルメットの下の彼の顔は満面の笑みなのかもしれない。

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順調にプロダクションが進んでいる事をYouTube動画で語るSKULLYのCEO

 

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

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