2009年、バンクーバーオリンピックの前年に、アルペンスキーヤーの皆川賢太郎と結婚。現役選手同士の結婚ということで、当時は話題になりました。現在は結婚6年目ですが、お互いに支え合い、年々、絆も深まっています。
SAJ28承認第00237号
自分でも驚くようなタイミングで結婚!
主人とは2年ほどお付き合いをしていて、「バンクーバーオリンピックが終わったあとに結婚かな」という話をしていたんです。でも彼が、「今でも来年でも、お互いの気持ちが変わらないのであれば、今入籍してもいいんじゃない?」と言ってくれて。自分でも驚くような不思議なタイミングで、結婚することになりました。お互いにスキー選手だったので、トレーニング中心の毎日。一緒にいるのは、1年のうち2か月くらい。だから結婚前も結婚後も、生活はそんなに変わりませんでした。
結婚して良かったことは、自分の努力を見てくれる人が増えたこと。試合に勝っても負けても、転んでも何をしても、私のことをずっと見ていて「大丈夫だよ」と言ってくれる主人という味方が、母親以外にもできた。これが、私にとってなにより素晴らしいことでした。メダルを獲ることだけを期待するのではなく、私自身を認めてくれて、真正面から受け止めてくれる人が身近にいることは、とても幸せなことだと思います。結婚したことで、改めてメダリストになるという目標に向かって、もっと頑張ろうと思えるようになりました。
結婚6年目。今も変わらず仲良しです
ケンカは、ほとんどしません。一緒にいられる時間が短いので、ケンカをする時間がもったいなくて(笑)。彼はワーッと怒るタイプではなく、私を納得させてくれる言葉をもっているし、話を聞いてくれる人。そんな“懐の深さ”を尊敬しています。
2014年に引退してからは、一緒に過ごす時間が増えました。なかなか一緒に過ごせなかった頃は、外食をするたびになんだかデート気分でちょっと“頑張って”いたのですが、今はようやく同じ空気感のなか、落ち着いて過ごすことができているように感じます。服装も、最近なんだか似てきました。結婚6年目ですが、ずっと変わらずに仲良くやっています。
最後のオリンピック、ソチ
2010年のバンクーバーオリンピックが終わって休養期間に入り、このまま引退をするのか、現役復帰をして次のソチオリンピックを目指すのか、目指すとしたらまだ間に合うのか。そんなことをずっと考えて1年間を過ごしました。
2011年の現役復帰会見では、「まだオリンピックを目指すとは言えません」とお話していましたが、心のなかでは「やるからには、オリンピックのメダルに目標をおいて歩いてみよう」、そして「ソチオリンピックを、最後のオリンピックにしよう」という思いを固めていました。
そうして迎えたソチオリンピック。スタート台から見る景色は、それまでのオリンピックとは違っていました。オリンピックがまるで自分の“ホーム”のような感じがして、周りを見る余裕さえあった。「綺麗に見せよう」とか「抑えて滑ろう」とは考えずに、全力でアタック!最終滑走を終えて、後悔は全くありませんでした。最後までメダリストという目標に向かって進んだ結果は、4位。メダルには手が届きませんでしたが、やるべきことはすべてやった。「ここまでやって、本当に良かった!」と、清々しい気持ちで最後のオリンピックを終えることができました。
これからのモーグルのために、自分ができることを
競技としてのスキーは引退しましたが、個人の楽しみとしてスキーはずっと続けていきます。毎冬、何の心配もせずにスキーができる健康な体を維持することが、これからの最大の目標かな。
モーグルに関しては、今のジュニアチームはしっかりと育成コーチがついているので私が出しゃばる場面はありませんが、20年間の経験や困難を乗り越えた体験などを伝えていけたらいいな、と思っています。周りが私を必要としてくれる間は、自分ができることをやっていきたいですね。
2018年の平昌(ピョンチャン)オリンピックは、24年ぶり、1994年のリレハンメルオリンピック以来の“外側”から観るオリンピックです。日本チームで一緒に練習したり、戦ったりした子たちの滑りを見て自分がどのような気持ちになるんだろうかと、今からワクワクしています。男子にも女子にも、良い選手がたくさんいるので、どうぞみなさん注目してください!
明日を変えるのは、今日の一歩
私には、大切にしている二つの言葉があります。
一つ目は「困難のない人生は“無難”な人生、困難のある人生は“有難い”人生」。オリンピックでメダルに手が届かずに落ち込んでいたときに、メッセージでいただいた言葉です。「そうか、困難があることは有難いことなんだ。だったら困難にくじけず前に進もう」という気持ちになれた。今でも悲しいときや辛いときには読み返しています。
もう一つは、「明日笑うために、今日を頑張ろう」。子どもの頃、「学校に行きたくないな」と思いながら下を向いて、自分の足元を見て歩いていたのですが、一歩ずつ足を動かしていると、いつの間にか学校に着いているんですよね。そのとき「頑張って歩き始めれば、いつか目的地にたどり着くんだ」ということを実感したんです。今日の一歩を踏み出すことで、明日が変わる。だから、今日頑張ろう!そう思って、色々なカベを乗り越えてきたんだと思います。
モーグルに出会い、長野オリンピックに出場し、20年間選手を続けられたのは、たくさんの人が私を励まし、支えてくれたから。本当に、感謝しています。
現役は引退しましたが、これからまた新たな困難に直面することもあるかもしれません。でもどんなときも、前を向いて、上を見て、一歩ずつ進んでいこうと思います。
※このコラムは、保険市場コラム「一聴一積」内に、2015年12月9日に掲載されたものです。
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PROFILE
上村 愛子 (うえむら あいこ)
元女子モーグル日本代表
高校3年生で長野オリンピックに初出場。2007~2008年シーズンのワールドカップで日本モーグル界初となる年間総合優勝を達成、翌2008~2009年シーズンの世界選手権では2冠に輝くなど、世界No.1の称号を手にする。2009年、アルペンスキーヤーの皆川 賢太郎氏と入籍。オリンピックには5度出場し、1998年の長野オリンピックから2014年のソチオリンピックまで5大会連続入賞という偉業を成し遂げた。2014年に現役を引退。現在はスキー普及活動やイベント・メディアなどに出演し、活躍中。
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