坂名信行
2016年8月21日16時43分
第98回全国高校野球選手権大会(日本高校野球連盟、朝日新聞社主催、毎日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)は第14日の21日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で決勝が行われ、作新学院(栃木)が北海(南北海道)を中盤に逆転して7―1で破り、深紅の大優勝旗を手にした。
作新学院の全国制覇は史上初の春夏連覇を達成した44回大会(1962年)以来54年ぶり2度目。栃木勢としての優勝も同じく2度目となった。全国最多37回目の出場で初優勝を目指した北海は、北海道勢としては87回大会(2005年)の駒大苫小牧以来の夏の頂点がかかっていたが、届かなかった。
決勝に詰めかけた観衆は4万4千人。14日間の入場者数は83万7千人で、80万人を超えるのは過去最長の9年連続となった。
■伝統の守り 進化した攻撃
一気に攻める作新学院の攻撃に、甲子園がどよめき続けた。四回だった。先頭入江大生が四球。1点を追う展開なのに、送りバントはしない。「振れる球は全部振る」と藤野佑介が中堅フェンス直撃の二塁打。続く各打者もストライクゾーンへの球はすべて振った。5得点。怒濤(どとう)の攻撃は、北海のエース大西健斗を降板させても、なお続いた。
作新といえば、投手を中心とした守りの野球が伝統だった。史上初の春夏連覇を遂げた1962年の44回大会はエース八木沢荘六を欠きながら、小差を守りきり、頂点に立った。「怪物」と呼ばれた江川卓が豪速球を投げた73年の夏は2回戦で延長十二回、0―1で銚子商(千葉)にサヨナラ負け。貧打に泣いた。
2006年秋、小針崇宏監督が23歳で就任した。3年で、31年ぶりに夏の選手権に導いた。しかし、1回戦の長野日大戦で8―10と打ち負けた。
以来、得点力の高い野球を目指した。練習はマンネリを避け、ライナーで長打を打つ日、ヒットエンドランで走者を進める日など、日替わりで明確な目標を示した。今年は栃木大会6連覇にちなんで「素振りは1日600本、ご飯は6杯。6点取る野球がテーマでした」と藤野は言う。
もちろん、掲げる野球を実践できたのは、選手が成長したからに他ならない。昨夏の甲子園メンバー外だった今井達也が、150キロを連発する投手になった。今年5月から野手になった入江が大会タイ記録の3試合連続本塁打を放った。
「伝統は残さないといけない。でも、改善もしていかないといけない」と小針監督は語っていた。11年に4強、12年に8強。着実に力をつけ、就任10年目の今年、花開いた。アルプス席で観戦した62年の優勝メンバーの佐山和夫さん(71)は「完全なる『小針野球』です」とたたえた。(坂名信行)
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▼作新学院の優勝は最長ブランク 54年ぶり。これまでの最長は97回大会(2015年)で優勝した東海大相模の45年ぶり。
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