おぞましい人道危機というしかない。

 アフリカの南スーダンで7月、大統領派と副大統領派の武力衝突が起きた。小康状態とはいえ今も散発的な戦闘が続く。

 慄然(りつぜん)とさせられるのは、国連機関や人権団体が現地から伝える民間人の被害である。

 両派の戦闘に住民が巻き込まれただけではない。大勢が避難した国連の保護施設を狙った銃撃や砲撃。対立民族出身と判明した住民の殺害。未成年を含む女性に対する性的暴行。商店や食糧倉庫の略奪――。

 蛮行の数々が国民を守るべき兵士によって繰り広げられているという。この1カ月間で約7万人が隣国ウガンダに逃れた。

 この事態を受けて国連安保理は最近、より強い武力行使の権限を持つ国連平和維持活動(PKO)部隊の増派を決めた。まずは、この人道危機を止めることに全力をあげてほしい。

 南スーダンは半世紀に及ぶ内戦を経て2011年にスーダンからの独立を果たした、世界で最も新しい国家だ。

 「自分たちの国」を手にした歓喜に沸いたのもつかの間、主要民族の間の争いから、13年に新たな内戦が勃発した。200万人以上が家を追われ、国内外で避難生活を送る。

 昨年、和平合意が成立。対立してきた民族同士が共に政府、国軍、警察を構成しての国造りが、ようやく緒に就いた時期の衝突だった。

 背景には、国の収入源である石油事情の悪化があった。内戦による減産に加え、国際価格が低迷している。給与の遅配などで兵士のモラルも下がった。

 暴力が広がり、経済や人心の荒廃がさらに進む負のサイクルを断ち切らなければならない。武器を置いて、国造りを再開するよう、国際社会は両派への説得を尽くす必要がある。

 民主的な政府と公正な統治を根づかせる国家建設には、膨大な時間と労力がかかる。まして多くの民族が武力で割拠している南スーダンでは、はるか遠いゴールにもみえる。

 だが思い起こしたい。この国がゼロからのスタートを切ってから、まだ5年が経過したばかりだ。

 日本はPKOに自衛隊を派遣しているが、それ以外にも人材育成や保健衛生、教育など得意な分野がある。治安が回復され次第、できる限りの貢献をすべきだろう。

 わずかずつでも歩みを進め、南スーダンの国民が「独立の果実」を実感できるよう、ねばり強く支えていきたい。