〈登場人物〉
・マイルズ アップシャー
　フリージャーナリスト。本作の主人公。


chapter2 -侵犯-


雲行きが怪しい。
いや実際の天気はとてもいいものだった。今日は気持ちの良い晴天で今は綺麗な夕焼けが照っている。
問題なのは森であることだった。
マウントマッシブ精神病院の正確な場所を調べ、車を出したのは良かったのだが、ここまで山奥だとは思わなかった。
道は狭く、また岩が転がっているため、ひどく運転しにくい。
車の底が落石と強かにぶつかり嫌な音をたてる。
先程までの上機嫌と一転、俺は舌打ちをしながら目的地を目指した。

森の奥へ奥へと進み、木はいっそう生い茂り、傾いた日の光は既に車を照らしてはいなかった。
こうなると酷く不気味だ。しかもこの先に精神病院があるというのだからタチが悪い。
精神病院という響きは俺の恐怖心を煽るには充分だった。

しばらく車を慎重に走らせていくと、ヘッドライトの照らす先に豪華な門がみえた。
やっと到着したという安堵、またこの敷地の中にある未知に不安を覚えながら車を進める。
メールには違法行為と書いてあったが、詳細は全くわからない状態なのだ。あの文面を見てホイホイとここまで来たのは軽率だったのではないかと俺は少しだけ、後悔していた。