マイナス金利政策半年 効果や副作用を検証へ

日銀が異例の「マイナス金利政策」を導入してから16日で半年となります。この間、世の中の金利全般が低下し、個人や企業が資金を借り換える動きは広がりましたが、消費や投資が活発化し物価が上昇する状況には至っておらず、日銀は、政策の効果や副作用を検証し対応を検討する方針です。
日銀が、ことし2月に導入した「マイナス金利政策」は、金融機関が日銀に預けた当座預金の一部の金利をマイナスにする、つまり、手数料をとる形にして、金融機関に企業や個人への貸し出しを促す異例の政策です。

導入からの半年で、世の中の金利全般が低下し、住宅ローンの金利も過去最低の水準に下がったため、返済中の住宅ローンを借り換える人が急増しました。

また、企業の間では、低い金利で資金を調達しようと、社債を発行する動きが広がりました。「野村証券」によりますと、ことし1月から7月までに企業が国内で発行した社債は、5兆9770億円と、去年の同じ時期より1兆6000億円余り増えて、特に、償還までの期間が15年以上の「超長期債」の発行が増えているということです。ただ、社債を発行する目的は、新規の投資ではなく、低い金利の資金に借り換えて、財務を改善しようというケースが多いということです。

このように、個人や企業が資金を借り換える動きは広がりましたが、日銀が目指す消費や投資が活発化し物価が上昇する状況には至っていません。さらに、金融機関の収益が圧迫されるなどの副作用も出始めていることから、日銀は9月に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策を含む今の金融緩和策の効果や副作用を総括的に検証し、2%の物価目標をどうすれば実現できるのか、政策の枠組みの見直しも含めて対応を検討する方針です。

「超長期債」の発行相次ぐ

証券最大手の「野村証券」によりますと、ことし1月から7月までの間に、企業が発行した満期までが15年以上のいわゆる「超長期債」は、総額で7710億円に上ります。これは、この期間に新たに発行された社債の発行額全体のおよそ13%に上るということです。

このうち、全日空を傘下に持つ、「ANAホールディングス」はことし6月に満期までの期間が20年で、利率が0.99%の社債を発行し、200億円を調達しました。この会社が20年債を発行するのは19年ぶりで、金利負担を減らし、財務を強化することが主な狙いだということです。「ANAホールディングス」の財務企画・IR部の礒根秀和さんは、「航空機など毎年2000億円から3000億円という設備投資をする中で、財務的な負担が軽減できることは大きい。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、新たな投資も予定していて、低い金利で資金調達できる環境を活用していきたい」と話しています。

このほか、「JR西日本」や「JR東日本」それに「三菱地所」が、償還までの期間がさらに長い40年という社債を発行しています。企業による超長期債の発行が増えている背景には、金利の低下によって資産運用に悩む投資家が、少しでも高い利回りを求めて、超長期債を積極的に買っていることもあるということです。

金融庁 銀行収益圧迫による悪影響を懸念

金融庁は、日銀のマイナス金利政策が銀行の収益を圧迫し、かえって景気に悪影響を及ぼすおそれもあるとみて、日銀との意見交換を重ねていく考えです。

金融庁は、マイナス金利政策が銀行の経営に与える影響を調べています。この中では、銀行が資金を調達するコストが減るという利点もあるものの、貸し出し金利の引き下げを迫られるため、減少する利益の規模は、来年3月期の決算で3大金融グループだけで、3000億円に上る可能性があるとみています。

金融庁は、日銀が現在、マイナス0.1%としているマイナス金利の幅をさらに拡大するなどして、銀行の収益が一段と悪化する事態になれば、企業に資金を貸し出す余力が損なわれ、かえって景気に悪影響を及ぼすおそれもあるとみて、今後も日銀との意見交換を重ねていく考えです。