吉田は銀 4連覇ならず レスリング女子53キロ級

吉田は銀 4連覇ならず レスリング女子53キロ級
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リオデジャネイロオリンピックは18日、レスリングの女子53キロ級が行われ、吉田沙保里選手が銀メダルを獲得しました。吉田選手は決勝でオリンピックでは初めて敗れ、目標としていた4連覇はなりませんでした。
吉田選手は、初戦の1回戦でアゼルバイジャンの選手に勝つと、準々決勝と準決勝でも相手に1ポイントも奪われない危なげない試合運びで勝ち進みました。
決勝では、去年の世界選手権、55キロ級を制したアメリカのヘレンルイーズ・マルーリス選手と対戦し、吉田選手は序盤、1ポイントを奪い、リードして第1ピリオドを折り返しました。
しかし、第2ピリオドの開始直後に一瞬の隙を突かれて後ろに回り込まれ、2ポイントを失い逆転を許しました。さらに残り1分のところで2ポイントを奪われ、1対4で敗れました。
銀メダルを獲得した吉田選手は、オリンピックに出場4回目で初めての敗戦となり、目標としていた4連覇はなりませんでした。また、2001年から続いていた個人戦の連勝記録も206で途切れました。
吉田選手は、「日本選手団の主将として金メダルを取らなくてはいけなかった。多くの声援が聞こえていて、最後は勝てるだろうと思っていたが、自分の力を出し切れなかった」と涙を流しながら話していました。
吉田沙保里選手は三重県出身の33歳。4大会連続のオリンピック代表です。父親の栄勝さんが開いていた自宅の道場で3歳からレスリングを始めました。
離れた位置から飛び込む「高速タックル」を武器として、オリンピックでは女子が正式種目に採用された2004年のアテネ大会から前回のロンドン大会まで55キロ級を3連覇。世界選手権は2002年に初優勝して以来、去年まで13連覇を果たしています。世界選手権とオリンピックを合わせての16連覇は、ロシアのアレクサンドル・カレリン選手が男子グレコローマンスタイルで達成した12連覇を上回りレスリング史上最多の記録です。
こうした功績を評価され、2012年には国民栄誉賞が授与されました。ロンドンオリンピック前の2012年5月に東京で開かれた団体戦のワールドカップ決勝でロシアの選手に敗れたのが最後の敗戦で、個人戦で外国選手に負けたことはこれまでありませんでした。
個人戦では2001年12月の全日本選手権で山本聖子選手に敗れたのが最後で、およそ15年、負けがなく、リオデジャネイロ大会前まで203連勝を続けています。
前回のロンドン大会のあと階級の変更が行われたため、オリンピック4連覇がかかる今大会は53キロ級での出場となりました。世界の選手たちが「高速タックル」を徹底的に研究して「吉田包囲網」を張り、年齢も33歳になって全盛期のスピードを維持するのが難しくなる中で、タックルに入る前の動きや組み合ってからタックルに入る動きを磨くなどの対策を進めてきました。そして、去年12月の全日本選手権以降は試合に出場せずに、いわば「ぶっつけ本番」で4回目のオリンピックに臨んでいました。

マルーリス選手「吉田選手を見本に練習」

吉田選手を破って金メダルを獲得したアメリカの24歳、ヘレンルイーズ・マルーリス選手はNHKのインタビューに対し、「吉田選手は自分がレスリングを始めたときから活躍していた最高のレスラーで、ものすごく尊敬しているし、彼女を見本に練習してきた。この2年間、新しいコーチとともに吉田選手対策をしてきた。コーチや家族、助けてくれたみんなに感謝したい」と興奮さめやらぬ様子で話していました。

母の幸代さん「立派な銀メダルで娘を誇りに思う」

吉田沙保里選手の母の幸代さんは、会場の観客席の最前列でおととし亡くなった父の栄勝さんの遺影を持った家族とともに声援を送り続けました。
幸代さんは試合後「去年の世界選手権のあたりから体力的には衰えがきているかなと親なりに感じていました。決勝では監督のほうを見て『どうしよう』というような顔をしていて、ちょっと勝つのは難しいかなと思いました。負ける時は絶対に来ます。立派な銀メダルで娘を誇りに思います。亡くなった夫も『よく頑張った』と言っていると思います」と最後まで全力で戦った娘をねぎらっていました。

吉田選手の兄「精いっぱい頑張った」

吉田沙保里選手の出身地、三重県の津市では、兄や地元の人たちが観戦し、健闘をたたえました。
吉田選手の出身地、津市一志町のホールには、兄の吉田勝幸さんや地元の人たち、およそ600人が集まり、声援を送りました。オリンピック4連覇はなりませんでしたが、集まった人たちは風船のスティックをたたいて健闘をたたえ、涙を流す人の姿も見られました。
兄の吉田勝幸さんは「負けてしまったが、精いっぱい頑張ったと思う。相手のディフェンスがうまかった」と話していました。
吉田選手が育ったレスリング教室に通う女子高校生は「銀メダルは残念だけれども、日本選手団の代表としても頑張ったと思う。胸を張って帰ってきてもらいたいです」と話していました。

出身大学では健闘をたたえる声

吉田沙保里選手が卒業した愛知県の至学館大学では、試合を見守った人たちから健闘をたたえる声が聞かれました。
愛知県大府市の至学館大学は、吉田選手が練習を積んだレスリングの強豪校です。19日は学生や市民などおよそ400人が大型のスクリーンで試合を見守り、大きな声援を送りました。
決勝で敗れオリンピック4連覇を逃すと、会場は静まりかえり涙を流して残念がる人の姿も見られましたが、集まった人からは健闘をたたえる声が聞かれました。
大学1年生の男子学生は「残念でしたが、いい試合だったと思います。吉田選手には『今まで勇気をくれてありがとう』と言いたい」と話していました。
また、吉田選手のヘアスタイルを担当している女性美容師は「よく頑張ったと思います。とにかくお疲れさまでしたと伝えたい」と話していました。