« Amazonにジェンダーというカテゴリができて | トップページ

2016年8月21日 (日)

非正規雇用はジョブ型か?

昨日、ユニオンサマーセミナーでお話ししてきました。

Union

講演後、かなりたっぷり質疑応答の時間があって、その中に非正規雇用はジョブ型なの?という質問がありました。質問したご本人がツイートしているので、それを引用しておきますと、

https://twitter.com/Ningensanka21/status/766981232609497088

今日はhamachan先生に「ぶっちゃけ非正規ってジョブ型じゃなくね?」という趣旨の質問をしてみたら、「ルールとしてのジョブ型」と「事実としてのジョブ型」という答が返ってきたが、どういう意味なんだろう。

個人的には、非正規労働者は就「職」でもなければ、賃金もほぼ最賃+αという感じで職務給でもなく、メンバーシップではないがかといってジョブに基づいて処遇されているというわけでもないよなぁと感じていた。

hamachan先生曰く、ルールとしてジョブに基づいた処遇をしているわけではないが、結果としてジョブ型(に近い)のだそうだ。

パートやアルバイトという雇用形態で求人していても実際にやる仕事はレジ打ち等と決まっていて、最賃+αでへばりついていてもそういう賃金体系と決まっていれば、ジョブを基準に処遇しますよというわけではないが、事実としてジョブ型(に近い)というお話(メモし切れなかったので違うかもしれない)

あらかじめ「ジョブを基準に処遇しますよ」というルールになっていて、運用もその通りになっている社会を「ジョブ型」と呼んでいて、日本の非正規労働者は別にそういうルールがあるわけではないが、運用の実態としてそれに近似しているということかな(違うかもしれない)

そういう意味でいえば「非正規はジョブ型」という言い方はジョブ型正社員などを考えていくときに変な誤解をされかねないので、あまり良い言い方ではなく注意が必要、とのことだった。

まぁ、メンバーシップ型/ジョブ型の分類はあくまで頭の整理に使うためのものであって、「これはメンバーシップ型/ジョブ型か?」という問そのものはあまり建設的ではなさそう。

若干解説的コメントをしておきますと、私の用語法がやや曖昧だということでしょう。労使関係とは労使が作り上げるルールのシステムであるという意味からすると、欧米のジョブ型社会のジョブを基底においたルールの体系も、日本の「正社員」の地位を基底においたルールの体系もいずれもひとつの労使間系システムといえますが、日本の非正規というのは会社のメンバーじゃないという否定的な規定に基づいたものなので、それ自体として積極的な、言い換えれば労働者がそのルールを根拠として権利を主張することができるようなものではない、ということです。

そんなのを「ジョブ型」とか言うな、というのは立派な根拠のあることなのですが、しかし消極的な規定とは言え、実際には仕事が決まっていて、賃金も決まっているという点に着目すれば、類型的にはジョブ型に近いし、何よりも「正社員」に求められている本来の雇用契約を超えたレベルの「義務」「責任」を負わないという点で、欧米のジョブ型労働者に近いのはむしろこっちだよという意味を込められるので、わざとこういう言い方をしている面があります。

遠藤公嗣さんなんかは、おそらく戦略的な意味を込めて、非正規労働者の職務給こそがこれからの職務給の元になるというような言い方をするわけですが、そこにも同じような問題点はあります。

そういう意味では、実は直接指揮命令関係にある当事者ではないレベルで職務範囲とそれに対応する賃金水準が決められる建前になっている労働者派遣というシステムは、もちろん現実には現実との妥協でかなり変形されているとはいえ、欧米のジョブ型システムに相対的には近いものになっているという面もあるのかも知れません。産業レベルの労使交渉でではなく、派遣会社という個別企業によるものですが。

|
|

« Amazonにジェンダーというカテゴリができて | トップページ

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/67109123

この記事へのトラックバック一覧です: 非正規雇用はジョブ型か?:

« Amazonにジェンダーというカテゴリができて | トップページ