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2016年07月29日 素晴らしき台湾邦題の世界
■[映画][アニメ][戯れ言]素晴らしき台湾邦題の世界。

えー。夏休みを怠惰に過ごすことでおなじみの私ですが。
今年は珍しく遠出をするぞ!という事で。夏期休暇をもらってですね。
成田から航空機に乗りまして。
台湾は台北に行ってきました。
海外に行くのは学生時代の終わりに韓国・ソウルに卒業旅行して以来ですから・・・・15年以上ぶりです。パスポート取り直しました。
理由はこれです。
9年ぶりのマット・デイモンとポール・グリーングラス監督がタッグを組んだ「ボーン」シリーズ最新作「ジェイソン・ボーン」を見に来たわけです。9年。9年ぶりですよ。どんだけ待ったと思ってんだよ。しかも日本の公開世界最遅なんですよ!2ヶ月遅れですよ。
ふざけんなよ!おれはなあ「ボーン」を「見たい」んじゃねえんだよ!もういっそ映画を「浴びてえ!」「浴びてえ」んだよ!というわけでまあ、4回くらい映画を浴びるように見まくってきたわけですが。←見過ぎだよ。
というわけで。台北で日本とそれほど変わらない生活を送ってきたわけですが。←なにしてんだ。
(関係ないけど泊まったホテルの部屋に描いてあった絵が何故か北斎)。
さて。
感想は日本版が公開された後に改めて書く予定です。本題は「ボーン」じゃないんです。
私が映画館に行ってチケット購入のシステムひとつとっても日本とは違うのに戸惑いつつもなんとかメモ帳を使っての「筆談」と「知ってる英単語を連呼する」という、国際ディスコミュニケーションぶりを遺憾なく発揮しながら映画館に入り込みまして。
そこにある色とりどりの新作映画の広告が目に入ったわけです。それを見て私は感動を禁じ得なかった事がありまして。きっかけはこの映画にまつわる
「スーサイド・スクワッド」台湾的邦題の衝撃。
日本でも話題のアメコミ映画「スーサイド・スクワッド(Suicide Squad)」。
台北でも日本よりも一足早く公開されるわけですが。その邦題がこちら。
「自殺突撃隊 史上最悪英雄」
かっ・・・・かっけえ。直接的!かつ無駄がないこの完璧な「邦題」!
アメリカ本国に媚びることなく、本国の言葉だけで意味だけを抽出した芸術的な美しさよ!
この「台湾邦題」の美しさに完全に心捕まれまして。映画館のポスターを見て回ったりしてました。
台湾邦題には主に2種類ありまして。ひとつは「漢字数文字」系、もうひとつは「当て字系」。あとはそのふたつのハイブリッドするという計3種の系統があります。
漢字数文字系
巨匠スティーブン・スピルバーグ監督の最新作「BFG」の日本邦題は、原題をそのまま使った「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」。絵にかいたような、つまらな邦題ですが。台湾はこうです。
「吹夢巨人」
どうですか。この美しさ。原題におもねることなく、かつ、たった4文字で映画を完璧に表現しきってるわけです。
もちろん、台湾邦題は傑作ばかりではありません。こういう例もあります。
当て字系。
同じく巨匠・クリント・イーストウッド監督の新作。原題は「SULLY(名声を傷つけるの意)」。日本の邦題は「ハドソン川の奇跡」ですが。台湾邦題はこうです。
「薩利機長:哈紱遜奇蹟」。
如何にも安直に当て字を加えた、日本邦題と同レベルのセンス。あまり面白くありません。
「シン・ゴジラ」はハイブリッド系。
今話題の「シン・ゴジラ」はどうでしょうか。こうなります。
「正宗哥吉拉」
「正宗」は「正統な、由緒正しい」という意味。「哥吉拉」は「ゴジラ」の当て字ですね。もともと「原題」もシンプルなのでこちらもシンプルにまとまってます。
更なる台湾邦題をもとめて。
次の映画の上映を待つ間、暇を持てあました私は、地下鉄で町へと繰り出しました。
↑台北にもSuicaみたいなICカードがある。
そこでやってきたのがここです。
本屋さんです!(←本当に日本にいる時と行動が変わらない男)。
自称・台北一の蔵書量を謳ってました。
そこでプラップラ見て回ってたら、DVDコーナーを発見しまして。
そこで台湾的邦題を漁ってみました。
スタジオジブリとディズニーの台湾邦題事情。
ジブリも揃ってました。あんまりジブリの「台湾邦題」は、漢字文化という共通点もあって、そのまんますぎて面白みに欠けるのですが、一つだけ琴線に触れるものが。
「心之谷」
「耳をすませば」の台湾邦題がこちら。どういうことかと思ったら、原作のひとつである柊あおい先生の少女漫画「耳をすませば/幸せの時間」の台湾邦題が「心之谷」なんですね。
ピクサーを含むディズニー作品のラインナップも充実してました。
ディズニーの台湾邦題は傑作が多いです。たとえば今年公開された大ヒット作「ズートピア」。
「動物方城市」
当て字でない5文字でまとめられたほぼ完璧な邦題。
以下主な傑作邦題をまとめますと。
「トイ・ストーリー(Toy Story)」シリーズ→「玩具総動員」
「ベイマックス(Big Hero 6)」→「大英雄天團」
「メリダとおそろしの森(Brave)」→「勇敢傳說」
「ミスター・インクレディブル(The Incredibles)」→「超人特攻隊」
「モンスターズ・インク/モンスターズ・ユニバーシティ」→「怪獸電力公司/怪獣大學」
などなど。実に無駄のない美しい邦題の数々。台湾ディズニーのセンスにほれぼれします。
その中でも特に面白かったのが「シュガーラッシュ(Wreck-It Ralph)」の台湾邦題。
日本盤DVDと台湾盤DVDを比較してみましょう。
「無敵破壞王」!!
同じ映画とは思えません。
実写映画の傑作台湾邦題たち。
というわけで。当然実写映画作品もチェックしてみました。
そこから気に入った台湾邦題を挙げてみましょう。
まずポール・ハギス監督の「サード・パーソン」。
かなりおしゃれなイメージが先行するこの映画ですが。これが台湾邦題にかかるとどうなるか。
「情慾三重奏」
「三重奏」というおしゃれ感を見事に打ち消す「情慾」の2文字。このインパクトにはのけぞりました。台湾怖い。
そんな台湾の直撃系センスが炸裂するのが邦題「恋愛だけじゃダメかしら?」。
妊娠と出産にまつわるロマコメを、如何にも日本的センスで無味無臭にした邦題が印象的ですが、台湾の手にかかると邦題はこうなります。
「好孕大作戦」
おしゃれ感ゼロ!ダイレクト!インパクト!そして、内容を完璧に表現したそのセンス!あまりの題名に最初日本の邦題の方がまったく出てきませんでした。もう「恋愛だけじゃダメかしら」なんてヌルい邦題じゃ満足できなくなる、そんな邦題です。
技あり系邦題もある、傑作台湾邦題たち。
ダイレクトな邦題だけが魅力ではありません。時に深く唸らされる「ワザあり」系テクニカル邦題があるのも台湾邦題。
その代表格と言えるのが映画史に残るロバート・ゼメキス監督の「フォレスト・ガンプ/一期一会」。その台湾邦題がこちら。
「阿甘正傳」
一庶民の流転する運命を描いた中国の大作家・魯迅の代表作「阿Q正伝」をもじり、映画を象徴する名台詞として名高い「人生はチョコレートの箱のようなもの。 開けてみるまでは何が入っているかわからない。」に掛けて、「阿甘正伝」とした、このセンス!まさに技ありと言わずしてなんと言おう。
そして、もっとも傑作だと思った台湾邦題がこちらだ!
「惡棍英雄:死侍」
俺ちゃんヒーロー映画「デッドプール」の邦題がこれだ!!
「死侍」!「死侍」ですよ!?
完璧。完璧と言わざるを得ないネーミング。ちなみに惡棍とは「ごろつき」という意味。たった6文字で見事に「デッドプール」のなんたるかを表現しきった、完璧な邦題では無いかと思います。
このように掘っていけばさらに面白い邦題の作品に出会えそうな、「台湾邦題」の世界。まだまだ我々日本人が知らない、奥深い邦題が眠っていそうなそんな予感を抱きつつ、筆を置くこととします。