※当然ネタバレ含むので観てない人は観てからでお願いします。
シン・ゴジラ、めちゃくちゃよかった。よすぎて既に2回観てるし、多分3回目もどこかで観る気がする。
よかったところが多すぎて何から書けばいいか迷うけど、いろんな背景とか前提とか抜きにして、エンタメとして完成度が高かったなあと思う。
多分、庵野作品もゴジラシリーズもまったく見てこなかったって人でも楽しめるようなストーリー演出になってるので見て欲しい。
逆にエヴァ見てて「ちゃんとまとめられるのか?」ってなってる人もTVエヴァのラストと違ってしっかりまとまってるの見て欲しい。
というか全国民に見て欲しいですね。正直。
特に「無人在来線爆弾」のシーンは必見なのでお願いします。
無人在来線爆弾、今年の流行語大賞に選ばれてほしい
— zekitter (@zekitter) August 15, 2016
旧ゴジラへのリスペクト
個人的にはやっぱりこれまでのゴジラシリーズ、特に初代ゴジラをリスペクトをしていたところが一番よかったなあと思う。
リスペクト、というのは例えば伊福部サウンドをそのままBGMとして使ってるというのがまずあって、いろいろ名曲が使われている中でもやはりヤシオリ作戦開始とともに使われる「宇宙大戦争」は激しく興奮した。これ聴くためだけでも映画館で観る価値はあると思う。
あとはオープニングも初代ゴジラのオープニングに合わせてるし、エンディングの「ゴジラ」「三大怪獣・地球最大の決戦」「怪獣大戦争」「ゴジラVSメカゴジラ」の4連続もテンション上がる。
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他にもマキ博士の出身が初代ゴジラで最初にゴジラが上陸する大戸島だったり、東京湾を漂っている船がグローリー丸、つまり初代ゴジラで海に引きずり込まれる“栄光丸”をオマージュしているなど、ファンならニヤリとするようなネタも散りばめられています。
ただ、そういった表面的なリスペクトだけでなく、初代ゴジラの精神性に対するリスペクトも非常に強く感じられた。
3.11後の日本
そもそも初代ゴジラが制作された1954年というのは、第二次世界大戦・太平洋戦争が終わった直後であり、そういった色香を漂わせた作品である。実際本多猪四郎監督も戦争が原体験になっているようなことを言っていたと思うが、救護所のシーンの生生しさなどはまさにそれを物語っている。
2016年の日本映画として、戦争をテーマにするというのは、なかなかリアリティが感じにくく難しい。
だが、「シン・ゴジラ」では東日本大震災をテーマとして描いているが、これがかなりリアリティがある。
まずはなんといっても最初の政治家たちによる初動対応がまさに3.11のそれ。作業服を着て記者会見するのとか(意味あるの?)まんま過ぎる。
TwitterとかYoutubeの映像が流れるのもあえての演出なんだろうなと思う。あとはテロップとかもそれっぽいし。
ゴジラ第二形態が通り過ぎた後の蒲田も、津波が襲った後の東北の映像を思い出すし。
あとはゴジラを凍結させたものの、あれその後どうするの?っていうのは福島第一原発の現状にそっくりそのまま言えることだったり。
だから多分、面白い映画ではあるけど、海外ではそれほどヒットしないのではないかなとも思ったりする。あの時の日本を体験していない人にとっては、なにこれってなるだろう部分も多いから。(ついでに言うとアメリカや露中を悪者として描いてる部分もあるし)
エヴァとの関連
そうそう、オタクなのでエヴァについても触れておくと、見方によってはあれはエヴァだよなともなる。例えばヤシオリ作戦というのは、なんの説明もないがスサノオノミコトがヤマタノオロチに飲ませた「八塩折之酒」から来ているらしい。ゴジラをヤマタノオロチに見立てているわけですな。ちなみに特殊建機部隊がアメノハバキリというのもヤマタノオロチを退治した剣の名前。でもエヴァを見ている我々からすると「ヤシマ作戦じゃん」としか思えない。
というかところどころDECISIVE BATTLE(パターン青になる時によく使われるアレ)を使うせいで巨災対(巨大不明生物特設災害対策本部)がNERVにしか見えないし。
一応ヒロイン的な尾頭ヒロミとカヨコ・アン・パターソンという対照的な二人の女性も出てくるんだけど、位置づけとしては綾波とアスカなんだよなあ。どう見ても。
ということは余貴美子さん演じる花森防衛大臣がミサトさんということか!?
リアリティの追及
本作の特徴としては徹底的なリアリティの追及というのがある。
政界のシーンの首相官邸の様子などは、もちろん取材もしているそうだが、執務室など極秘スペースに関しては安倍首相のブログなどから類推した間取りをセットにしているとか。
自衛隊にも取材をしていろいろと聞いているそうなのだけど、それでも教えてもらえない部分については「これとこれだとどっちが近いですか?」のような聞き方でリアリティを持たせにいったそうだ。
そういったリアリティの追及が、映画の迫真さを増していると思う。詳細については、パンフレットなどを読むと詳しく書いてるので皆さん買いましょう。
全体的な感想
まあいろいろと書いてきたけど、邦画でこういう作品が現れてくれて嬉しいというのが感想ですね。
アメリカ映画が何がすごいって、今年だと『キャプテン・アメリカ』『ズートピア』なんかがそうなんだけど、ふつーにエンターテイメントとして成立させつつも、テロや人種差別のような、アメリカ社会においてホットなテーマをしっかり描いているというのが本当にすごいと思う。もちろんそうじゃない映画もあるけど。
ゴジラシリーズでいうと、1984ゴジラは冷戦を描いていたり、ヘドラなんかも作風自体は賛否両論ありつつも、環境問題について描いていたりなど、そうやって社会と映画が向き合ってきた。
日本映画でそういうのって最近ありますかね?
あったら教えてほしいんですけど、自分が観た中ではあんまりないと思っていて、「ウケる要素」を詰め込んで映画の形をした何かを作っているだけになりつつある。
シリアスな犯罪事件モノがヒットしたらそういうのばっかり作ったり、ヒットしたテレビドラマの映画を劇場版にしたり、人気のあるアイドルを起用したり。そういうのも嫌いじゃないけど、そればっかりもなあという。
シン・ゴジラでも東宝としては恋愛要素を入れようとしていたみたいで卒倒しそうになった。
我々としては恋人がいたほうがいい、長谷川博己さんと石原さとみさんは元恋人にしましょうとか言ったんですけど、庵野さんはそういうのどんどん排除していって、人物たちのバックボーンは描かない脚本になりました。
東宝はなぜ『#シン・ゴジラ』を庵野秀明氏に託したか~東宝 取締役映画調整部長・市川南氏インタビュー~(境治) - 個人 - Yahoo!ニュース
あとなんというか、マキ博士の言葉じゃないけど、「好きにする」って重要なんだなあと思った。もちろん会社的な縛りはいろいろあったと思うけど、庵野監督、完全に好き放題やっとるやんけと。
庵野監督でいうと、新劇場版ヱヴァンゲリヲンの最終作が全然公開されなくてもはやネタになりつつあるけど、まあもはや個人的には別にしょうがないなと思っていて、むしろ半端な作品にするぐらいならしっかり時間かけて好きなもん作ったらええ、ワシらはいつまでも待っとるわいという気分になってる。
それはやっぱり、クリエイティブな仕事というのは創作者の内部から出てくるものだったり、創りたいという気持ちベースで進めないといい仕事はできないと思うから。スケジュールドリブンでカスみたいなもの産み出しても誰も幸せにならない。
自分はいわゆるクリエイターみたいな職種ではないけど、そういう仕事でもやっぱりやらされてる仕事だといい仕事できてなくて、逆にわりと好きにやってる案件はうまくいってたりするもんなあと。俺も好きにしたい。
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TOHOシネマズ新宿のサイン入りポスター
新宿で撮ったやつ。一応載せておく。