異常気象や地球温暖化には海の温度や溶け込んだ二酸化炭素の量などが大きく影響する。きめ細かな海洋観測が必要だが、日本は観測機器や船の運航が減り国際的な役割も十分に果たせていない。国、研究機関、大学などが連携し、観測態勢を立て直すべきだ。
特に、赤道沿いの熱帯太平洋の観測が手薄なのが心配だ。この海域は日本をはじめ世界の気象に大きな影響を及ぼすからだ。
海洋研究開発機構は海水温や塩分、潮流、風などの観測機器を付け、おもりで固定したブイを2012年には15基設置していた。だが今は8基で、50基以上の米国に大きく見劣りする。
ブイは1基数千万円するほか、熱帯海域に行く船を確保できないのが理由だ。海洋機構は研究船の「みらい」や「白鳳丸」などでブイの設置・回収や海水分析をしてきたが、近年は地震研究や海底資源調査などの大型プロジェクトに船が優先的に回されるという。
日本学術会議分科会の報告によると、研究者が提案した観測などのための研究船の航海日数は、今年度は500日以下の見込み。7年前の半分以下の水準だ。これでは観測・研究の人材育成も危うい。気象庁も10年に、観測船を5隻から2隻に減らした。
人工衛星も観測に使えるが海の深くの状況まではわからない。簡便な自動観測用フロート(浮き)は増えているが、5~10日に一度浮き上がる時にしかデータを送れない。データが足りないと気象予測などの精度向上は難しい。
海の観測は海洋機構、気象庁、大学、海上保安庁など多くの機関が担う。小型の練習船をもつ大学や高等専門学校もある。観測機器を共同で使ったり、航海時間を融通しあったりする工夫ができれば観測能力の不足を補える。
国の総合海洋政策本部は7月に「海洋状況把握」の能力強化を決めた。これを機に熱帯海域などの全体的な観測戦略を立て、機器や船を有効に使いつつ、人材も育てる仕組みを構築すべきだ。