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celt tero bai wye evia non clus tedus.
私は輝夜が好きだ。
恋とか愛なんてものではなくて、私は輝夜に「依存」している。
そして恐らくは、輝夜も同じく。
輝夜がいなくなれば私は生きては居られないし、輝夜も私がいなくなれば生きては居られないだろう。
蓬莱人である私たちが生きていられないだの何だのと言うのは、「生」を実感できなくなる―――すなわち「死」の感覚を味わえなくなるということだ。
死ぬことのない私たちが死ぬというのはつまり、「本当に死んでしまうかもしれない」と感じることだ。
生きても死んでもいない私たちが「生きている」と感じるにはこうして死を感じて、「生」を浮き彫りにするしかないのだ。
詰まるところ輝夜と私が定期的に凄惨な殺し合いを行っているのはそうして互いに「生」の実感を与えるために他ならない。
犬に餌を与える前に持鈴の音を聞かせる、ということを何度も繰り返すと、その犬はやがて持鈴の音を聞くだけで餌を想起して涎を垂らす様になるらしいが―――
今の私はまさしくその犬であった。
輝夜を見て反射的に「死」を想起する。
故に私は次第に「輝夜」という存在そのものに依存し始めたのだ。
「ねえ妹紅」
そうやって私を呼ぶ輝夜はねっとりとした視線で私の目を見つめている。
「なんだ、輝夜」
「百九十二対百三、もう夜が明けるわよ」
「ああ。夢中で気づかなかったけど、もうそんな時間だったのか」
そう、時間も忘れて殺し合うなんて久々の事ではあったが、兎に角私はもう既に百九十二回も輝夜に殺されていた。
尤も私は回数なんて数えないで戦っていたし、私が殺した回数で負けていることなどはそう言われて初めて知ったのだが。
その内に月も沈み、それどころか朝日すら昇り始めていたのだ。
勝負では明らかに私の負けだが、その分私は輝夜よりも多く「生」を実感できたということだ。
そう思っていた私にはむしろ優越感すらあったし、輝夜も同じく考えていた様でまだ殺され足りないといったような表情をしていた。
「これで終わりにしましょ。永琳にも心配されてしまうわ」
「わかったよ。じゃあ、早いところ首を落としてくれないか」
そして、私は丁度百九十三回目の死を迎えるところだった。
「ええ。さよならね。あなたが目を覚ます前にはもう居ないと思うから」
「また今度、だ―――」
そこまで言いかけたところで輝夜は私に接吻した。
輝夜と私が接吻を交わすのは別段珍しいことではなかった。
むしろ殺し合い以外では積極的にする程だ。
だけど、その時はあまりにも突然だったので状況がまるで呑み込めていなかった。
十数秒に及ぶ接吻を終え、私と輝夜の唇が離れてもまだ私は唖然としていたが、その内に首が落とされたことも私はよく認識できなかったらしい。
死ぬ際には絶頂の二百倍の快楽が襲ってくるという。
それなら私はもう数え切れないほどの強烈な快楽を感じているということになる。
数百年前に、輝夜への憎悪と殺意を快楽で打ち消せないものかと思い何度か自慰をして絶頂を迎えたことがあるだけなので、もうその感覚は忘れてしまって比較することはできない。
だけど輝夜に殺される瞬間は確かにとても気持ちの良いものだし、心地良い。
輝夜も私に殺されるときは同じように快楽を感じているのだろうか。
そう考えると私はいつも、もっと輝夜を殺してあげればよかったと後悔するのだ。
この日を楽しもう。どうせ我等は永遠に死ぬことなんてできないのだから。
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