恐怖政治が亡命動機か…外交官、今年10人近く
【ソウル米村耕一】北朝鮮の国営朝鮮中央通信は20日、北朝鮮のテ・ヨンホ駐英公使が家族とともに韓国に亡命したことを初めて公式に認め、「自らの犯罪が暴露されたため逃走しようとした者を、(韓国に)引き入れた」と韓国政府を激しく非難した。聯合ニュースによると今年、韓国に亡命した北朝鮮外交官はすでに10人近いとされ、北朝鮮当局は国外在住の外交官や貿易関係者への締め付けを強化するとみられる。
朝鮮中央通信は「同族対決の新たな謀略劇」と題した論評の中で、駐英公使について、秘密漏えいや横領などの容疑を捜査するため6月に召還・解任の指示が出されていたと主張。英国政府が北朝鮮からの再三の引き渡し要求に応じず、韓国へ亡命させたことについて「基本的な信頼すら破った」と強い不満を表明した。
北朝鮮側が主張する内容がどの程度、実態を反映しているかは不明だが、駐英公使がなんらかの理由による本国での処罰を恐れて亡命に踏み切った可能性はありそうだ。韓国統一省報道官は亡命理由として「金正恩(キム・ジョンウン)体制に嫌気が差したことや(英国で教育を受けた)子供たちの将来の問題」と説明していた。
また朝鮮日報によると、今年7月にロシア駐在の北朝鮮の3等書記官が西側に亡命するなど、「月に1〜2人の外交官が亡命している」という。
亡命が相次ぐ背景について、北朝鮮出身のある研究者は「金委員長の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)氏処刑後の傾向だ。こうした『恐怖政治』や断続的に進められる人事刷新に対し、幹部間で不安が高まっているためだろう」と分析する。朝鮮労働党関連機関の職員として東南アジア勤務中だった2000年代前半に韓国へ亡命したこの研究者によると、北朝鮮当局は「安全代表」と呼ばれる監視担当者を世界各地に派遣。党の複数の組織を通じ、海外在住者たちに厳格な相互監視体制も敷く。北朝鮮当局は今後、こうした体制をさらに強化するとみられる。