人が抱える寂しさを気づけるだろうか
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主人公は都会で移動デリを営む女性、夏都。
彼女は姉の子ども、智弥と暮らしている。
夏都は旦那と離婚し、一人で移動デリを営んでいる。
移動デリは別れた旦那の夢であり、仕事であったものの、彼女はそれを引継いでいる。
なぜだろうか。
負けず嫌い、そして逃がした魚は大きいのだというアピールだろうか。
一方智弥は人付き合いが苦手な中学生。
パソコンばかりやっており、必要最低限の会話はせず、感情もあまり表に出さない。
二人で不思議な生活を続けている中、事件は起こる。
夏都がさらわれる、ランチワゴンごと。
そこで出会ったのはカグヤというアイドルであった。
彼女に頼まれて、彼女の姉である女優のために、一肌脱ぐことになってしまう。
テンポよく進む物語、だが、ところどころに違和感がある。
頼んだのはカグヤなのだが、皆それぞれに目的がある。
本当の主役は誰なのだろうか。
それがわかる時に、物語は違ったものになる。
家族が別れて暮らすことが珍しくなくなった現代において、人はどのような悩みを抱えるのか。
人は仲間を見つけたがる。
そして、人は何かになりきることで恐れや不安を見えなくする。
人々の寂しさ、言葉にできない何かをこの小説は見せてくれる。
人間は経験によって変化していく
「心の中でくすぶりつづけ、紙についた皺のように、いつまでも消えてはくれない」
夏都は子供の頃の夢を忘れられない。
人は忘れてしまうような些細なことでも、なぜか頭に残ってしまうことはある。
そして、少しずづ斜に構えるようになるかもしれない。
人間は経験によって成長する。
今までの物事が積み重なって今が形成される。
今の自分は何がベースとなって形成されているだろうか。
人間は他人との触れ合いによって表情も変化する
「どうやら人はたくさんの側面を持っているらしい」
人は他人と触れ合うことで、様々な側面を見せる。
仕事中は、仕事人として、社会人としての側面を。
家に帰ればパパ、ママといった側面を見せる。
時と場合により無意識下で使い分けているものだ。
自分の知らない側面を見れるのはどういったときだろうか。
明確にしたくないからこそ、目を背けて逃げる
「行ったところで何の意味もないって、どっかで気づいてたけど、それがはっきりわかっちゃうのが嫌だったんですかね」
何かを目指している過程においては辿り着いた後のことを考えてはいない。
そこにたどり着いた先になにがあるのかを、その先にどうなるのかを考えてしまえば、人は迷いを生じる。
たどり着いた先に何もなかったとしたら、虚しいだけだとしたら。
そういった不安は、明確に言葉にすれば、顕在化する。
そこから目を背けたくなるのだ。
人間らしくないことに耐えるためには、心を消すしか無い
「人が人じゃないみたいに、物がただの物でしかないみたいに考えなくちゃいけないんだ」
人は心を持っている。
不安が積み重なれば心はダメージを受ける。
ダメージを受けなくするにはどうするか。
心を消すのだ。
自分を、まるで物になったかのように感情を消す。
自分を守るために。
そうなってしまう前に、周りが気づいてあげなければならない。
そして、自分から言い出せるような空気を作ってあげることが大事なのだ。
弱いつながりの社会の中で自分の場所を探していく。
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