門倉紫麻 漫画家になるための戦略教室

熱意はある。努力もしている。「才能あるよ」とも言われた。
でも、なぜか漫画家になれない——。
そんな漫画家志望者のあなた。
熱意はあって当たり前。努力も言わずもがな。
才能は、確かにあったほうがいい。
でも、漫画家になるためには、それでは足りない
「戦略」が、必要なのです!
漫画ライター・門倉紫麻が、作家陣へのインタビュー、モーニング編集部への
潜入取材を敢行して探った、その戦略とは!?
どこよりも実践的な漫画教室、開校!!

【再録】 ちばてつや賞出身! 岩明均さんインタビュー(3/3)(2015/10/16)

2013年に「モーニング」に掲載され話題を呼んだ、ちばてつや賞出身作家が新人時代から現在の活動までを語るシリーズ【あの人もちばてつや賞出身だった!】ちばてつや賞35周年を記念し、『戦略教室』にて再掲載中です!

シリーズ一人目に登場したのは、第7回ちばてつや賞入選作が「モーニング」の増刊に掲載され、漫画家デビューした岩明均さんでした。

高校生・シンイチとその右手に寄生した生物・ミギーとの共生を描いた『寄生獣』(「アフタヌーン」連載)で、多くの読者に衝撃を与えた岩明さん。現在は、古代ギリシア世界を舞台に、アレキサンダー大王の書記官・エウメネスの人生を描いた壮大な歴史漫画『ヒストリエ』を「アフタヌーン」にて連載中です。

全3回のインタビューの最終回は、漫画家志望者へのメッセージが満載!(第1回はこちら、第2回はこちら


【最終回】 漫画家志望者が、まず、やるべきこと


—— 新人時代に担当編集者に言われたことで覚えていることはありますか?

岩明均(以下、岩明) 「登場人物たちが、ただ言い合ってるだけ。もっと“会話”をさせるように(※1)」「要するに、この主人公をアイドルにしたいんだよ」「マンガで前衛芸術をやるな。だったら、前衛芸術家の物語を描け」
※1 「“会話”をさせるように」
『剣の舞』より(『雪の峠・剣の舞』収録)。剣豪・文五郎と、素性を隠して弟子入りした少女・ハルナとの「会話」。無言のコマで表情だけを見せる、現代口調を混ぜる、間をとる……と絶妙な計算がされている。それによってわずか1ページの中で、距離がありつつも互いに好意は抱いている、という微妙な関係が浮かび上がり、かつ、おもしろく読ませる「会話」が成立している。



—— 漫画家になるために「これ」は必要だと思うのはどんなことですか? 精神面でも、技術面でも、あるいはやっておくべきことでも結構です。

岩明 「完全主義の自分」と「妥協する自分」、8:2ぐらいで同居させるといいのかな……。どちらか片方だけだと、きついと思います。あと、自分の周囲を観察し測る「個性の物差し」と、自分自身を測りなおす「常識の物差し」の2本。でも新人の頃だったら「常識」の方は編集の人がやってくれると思います。

—— 以前、新人時代(※2)のことを「一人じゃコワイので手頃なライバルを求めていた」と書いていらっしゃいました。さらに「ライバル意識というのは単にひとをねたむ心とは違う。相手の力量を認めると同時に自らの力も信ずるところから出発しているからだ」とも書いていらしたのが印象的です(共に文庫『風子のいる店』②巻あとがきより)。この頃の心境について、詳しく教えてください。
※2 「新人時代」
文庫『風子のいる店』③巻より。岩明さんの初連載『風子のいる店』は、喫茶店のアルバイトを通して成長していく女子高生を描いた物語。本インタビュー第1回によると、「新人時代で最も苦しかったのはこの頃」とのこと。



岩明 1人で描いていて、誰も代わってくれるわけじゃないので心細いわけです。他人をねたむ以前の問題でして。同年代の仲間と暗闇の道を歩いていて、「おっかねえから、お前先に行けよ」みたいな感じです。

—— 新人賞をとったとしても、またデビューしたとしても、そこから先、いい作品を描き続けることができずに苦しむ人、マンガを描くことをやめてしまう人も多いと思います。岩明さんが30年近くもの間、マンガを描き続けてこられたのはなぜだとお思いですか?

岩明 「マンガを描く事」を嫌いにならなかったから。「自分がやれるやり方」を探し続けたから。あとは、執筆作業を行う上で、これまで身体的・精神的・社会的に致命傷を負うまでには至ってないので。でもこのごろは、身体的にガタがきて連載に影響が出ちゃっています。

—— ちば賞への応募者、プロのマンガ家を目指す人に、ひとことお願いします。

岩明 出会った編集者の人と意見や感覚が合わなくても、まずは編集の人の要望に応える努力を続けられる事をおすすめします。むろん、自分の主張・主旨を説明する事は大いにやるべきと思いますが。やがて違和感がなくなれば作業はやりやすくなるだろうし、逆に違和感が大きくなり、その編集者といつか決裂するにしても、それまでの努力は少しも無駄にはならず、むしろ苦手分野の「引き出し」が1つ増える事にもなるので。
『ヒストリエ』⑦巻より。現在も精力的に執筆中の岩明さん。「アフタヌーン」にて連載中の『ヒストリエ』は、今年で連載10年目に突入。何不自由のない暮らしを送った少年時代から一転、奴隷として生きる中でその才覚によりのし上がってきたエウメネス。⑦巻では、ついにマケドニア王国の書記官に!




第69回ちばてつや賞、募集開始!

2016年度前期・第69回ちばてつや賞一般部門では、ただいま作品応募の受け付け中です! 締め切りは2016年2月29日(月)当日消印有効です。

応募要項等の詳細はこちらのインフォメーションページをご覧ください!
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プロフィール

門倉紫麻(かどくらしま)
漫画ライター。
1970年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。Amazon.co.jpエディターを経て、フリーライターに。「FRaU」「ダ・ヴィンチ」「レタスクラブ」などで主に漫画に関する記事の企画・執筆、コラムの連載を行う。
著書に、「ジャンプ」作家に漫画の描き方を聞く『マンガ脳の鍛えかた』、宇宙飛行士らへのインタビュー集『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』がある。

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