貧困問う青年の主張 県対策会議に高校生ら
「別の幸せあったかも」◆実体験告白に葛藤
- 社会|神奈川新聞|
- 公開:2016/08/19 02:00 更新:2016/08/19 02:00
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子どもの貧困問題について高校生らが話し合ったフォーラム&ワークショップ=横浜市神奈川区
未来の選択肢
「皆さんの家にパソコンはありますか?」
同日、横浜市神奈川区で開かれたフォーラムで、県立高校3年の杉山麗さん(18)=鎌倉市=が、高校生や教員ら約100人を前にスピーチした。
家にはパソコンがなかった。学校の授業ではうまく扱えず、付いていけない。中学校時代には塾に行けなかった。その都度、母や先生に助けられて乗り越えてきた。だが自分は「貧困」に当てはまるのかもしれない-。フォーラムの準備を進める部会に参加して、初めて感じた。
「お金のことを一切考えなくてよかったら、別の幸せもあったかもしれない。貧困によって未来の選択肢が狭まることはある」
会場では思いを伝えた。「あなたの当たり前が、当たり前じゃない人もいる。子どもの貧困は日本にも存在していることを知ってほしい」
継続的提案を
フォーラムは、県の「かながわ子どもの貧困対策会議」の取り組みの一環。高校生と大学生約10人で構成する子ども部会が準備を進めてきた。
部会メンバーのうち2人が、当事者の立場から、参加者に向けて率直にスピーチした。
「実体験を話すのはとても勇気がいることで、葛藤もあった」。私立大1年の相馬美季さん(18)=横須賀市=は、給食費の支払いが滞りがちだった日々を振り返った。「単発のフォーラムで終わりではなく、継続的に政策提案していければ」と期待する。
私立大3年の大久保淳さん(20)=横浜市神奈川区=は当初、貧困のイメージができなかったが、部会で活動する中で「身近に貧困が隠れている」と気づいた。生徒が相談しやすい態勢づくりに取り組む県立高校の映像を制作し、会場で上映した。
いじめの温床
「中学時代にいじめられていた友人がいた。背景に貧困問題があったことに気づいた」。フォーラムに参加した高校生からは、実体験を振り返る声が聞かれた。参加者に啓発キャッチコピーを考えてもらうワークショップも実施された。
厚生労働省の調査では、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満は2012年時点で6人に1人。特に、母子家庭などのひとり親世帯では半分以上に跳ね上がる。昨年8月に県が実施したひとり親世帯へのアンケートでは年収100万円台、貯金が全くない世帯が3割強を占めた。
会議座長の湯澤直美立教大教授は「行政が当事者である子どもたちの声を聞き、具体策を丁寧に実現していく姿勢は重要だ」と話している。フォーラムで得られた成果は近く、黒岩祐治知事に具体策として提言する。